著者
門脇 知子 瀧井 良祐 馬場 貴代 山本 健二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.37-44, 2003 (Released:2003-06-24)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

グラム陰性偏性嫌気性細菌Porphyromonas gingivalis(ジンジバリス菌)は歯周炎の発症·進行において最重要視されている病原性細菌であり,菌体表面および菌体外に強力なプロテアーゼを産生する.なかでもジンジパイン(gingipains)は本菌の産生する主要なプロテアーゼであり,ペプチド切断部位特異性の異なるArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)が存在する.両酵素は相互に協力しながら生体タンパク質の分解を引き起こし,宿主細胞に傷害を与え,歯周病に関連する種々の病態を生み出すと考えられている.ジンジパインは歯肉線維芽細胞や血管内皮細胞の接着性を消失させ細胞死を誘導する.こうしたジンジパインの病原性は本菌の保有する病原性の大部分を占めており,それらの特異的阻害薬を用いることや遺伝子を欠損させることによって消失させることができる.ジンジパインは単量体として菌体細胞外に分泌されるだけでなく,外膜上では血球凝集素やヘモグロビン結合タンパク質,LPS,リン脂質と結合した高分子複合体としても存在する.この膜結合型ジンジパイン複合体は単量体よりさらに強力な細胞傷害活性を示す.ジンジパインは宿主に対して強い病原性を発揮する一方で,菌自身にとってはその生存増殖に不可欠であり,ジンジパイン阻害薬の存在下では本菌は増殖できない.最近,歯周病が心筋梗塞,早産·低体重児出産などの全身疾患のリスクファクターであることが指摘されるようになり,これら疾患とジンジバリス菌の関係も注目されている.本稿ではジンジパインの構造学的·病理学的特性と特異的阻害薬の開発によるその制御の試みについて紹介する.
著者
山本 健二 浅尾 哲次 赤峰 昭文 中西 博 TETSUJI Asao 浅尾 哲治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

歯周病の主要な病原性細菌Porphyromonas gingivalis(以後ジンジバリス菌)は自身の生存戦略に必須の物質として2つの主要なシステインプロテアーゼArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)を産生している。両酵素は細胞内外に存在し多様な機能を果たしている。細胞外にあっては、両酵素は歯周組織を直接したり、宿主の生体防御機構を破壊したりして歯周病原性を発現する一方、菌体にあっては自身の成長・増殖に必須のヘムやアミノ酸の獲得や菌体表層蛋白質の具プロセシング、血球凝集素活性やヘモグロビン結合活性などに強く貢献していることが明らかにされた。本研究の目的は、両酵素のこうした多様な機能の詳細な機能の解明を通じて、これらを薬物標的とした創薬研究を推進することにあった。とくに本研究では、Rgpに対する特異的な天然ならびに人工の阻害剤が探索され、それらの有効性を検定するとともに歯周病治療薬として実用化していくための具体的な方法論が検討された。天然の阻害物質としては、土壌の放線菌FA-70株の培養物中に本酵素活性を阻害する物質(FA-70C1と命名)を同定・単離し、構造を決定した。本物質は構造式C_<27>H_<43>N_9O_7で表され、分子量606の新規物質であった。またヒト唾液中にRgpを阻害する物質としてヒスタチンが同定された。ヒスタチンを含む宿主蛋白質のRgpによるペプチド結合の切断特異性に基づいて10種類以上のオリゴペプチドが合成され、その中から、Rgpを強く阻害するトリペプチド化合物(KYT-1と命名)を見出した。FA-70C1およびKYT-1はともにRgp活性を10^<-8>Mで80%以上阻害するのに対し、宿主のシステインプロテアーゼのカテプシンB、L、K、Sは同じ濃度で50%以下の阻害しか示さなかった。また、両阻害剤はRgpがもつコラーゲン分解能や免疫グロブリン分解能を強く阻害した。
著者
安田 英典 鈴木 和男 山本 健二
出版者
城西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

新型インフルエンザH1N1の学童間の流行伝播パラメータを2009年夏はじめの小集団の流行ケースから求め,仮想中央線モデルによる流行伝播シミュレーションを実施した.シミュレーションに基づいて学校閉鎖,家庭隔離などの対策の評価を行った.新型インフルエンザでは,感染した学童の成人対する割合が季節性インフルエンザとは大きく異なっていた.流行終焉後,公開された実データとシミュレーションによってポストアナリシスを行い,季節性インフルエンザとH1N1の流行伝播の差異について検討した.
著者
山本 健二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.345-355, 1995 (Released:2007-02-06)
参考文献数
47
被引用文献数
5 4

Progressive periodontal disease is characterized by acute progressive lesions of gingival connective tissues, excessive leukocyte infiltration, and occurrence of a characteristic microflora. A variety of proteolytic enzymes derived from oral bacteria and host cells are found in gingival crevices and thought to play an important role in the onset and development of progressive periodontal disease. The anaerobic bacterium Porphyromonas gingivalis has been implicated in the etiology of the disease. Recently, we have purified a novel arginine-specific cysteine proteinase, termed “argingipain”, from the culture supernatant of the organism. The enzyme was shown to have two important abilities related to the virulence of the organism. One is direct association with periodontal tissue breakdown through its abilities to degrade physiologically important proteins such as human collagens (type I and IV) and to evade inactivation by internal protease inhibitors. The other is associated with disruption of the normal host defense mechanisms through its abilities to degrade immunoglobulins and to inhibit the bactericidal activity of polymorphonuclear leukocytes. The virulence of argingipain was further substantiated by disruption of argingipainencoding genes on the chromosome by use of suicide plasmid systems. On the other hand, we have studied roles of host cell-derived proteinases in the periodontal tissue breakdown. Levels of lysosomal proteinases such as cathepsins B, H, L, G and medullasin were determined in gingival crevicular fluid from periodontitis patients and experimental gingivitis subjects by activity measurement and sensitive immunoassay. The results suggested that all of these enzymes would be involved in the development of both gingivitis and periodontitis.
著者
筑波 隆幸 山本 健二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.15-20, 2003 (Released:2003-06-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

カテプシンEは免疫細胞や皮膚などに限局的に存在する細胞内アスパラギン酸プロテアーゼである.我々はカテプシンEの機能を解析するために遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)を作成した.カテプシンE欠損マウスは無菌(Specific pathogen-free, SPF)環境下で飼育しても,全く異常は認められなかったが,コンベンショナル(Conventional)環境下で飼育するとアトピー性皮膚炎様症状を示した.このマウスは病理組織学的にもアトピー性皮膚炎の特徴である表皮肥厚と皮下組織への好酸球,マクロファージ,リンパ球,肥満細胞などの細胞浸潤が認められた.また,血液学的解析でも,高好酸球血症と高IgE血症が見られ,脾臓細胞からのIL-4,IL-5などのTh2サイトカインの産生上昇が観察された.さらに,血清でのIL-1βおよびIL-18濃度の上昇とこれらのサイトカインの生物学的半減期の遅延が認められた.アトピー性皮膚炎患者においても,カテプシンE量が健常者とくらべて有意に減少していることから,ヒトおよびマウスともにカテプシンEの欠損あるいは低下によりアトピー性皮膚炎発症を惹起することが分った.
著者
筑波 隆幸 山本 健二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.15-20, 2003-07-01
参考文献数
20
被引用文献数
2

カテプシンEは免疫細胞や皮膚などに限局的に存在する細胞内アスパラギン酸プロテアーゼである.我々はカテプシンEの機能を解析するために遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)を作成した.カテプシンE欠損マウスは無菌(Specific pathogen-free, SPF)環境下で飼育しても,全く異常は認められなかったが,コンベンショナル(Conventional)環境下で飼育するとアトピー性皮膚炎様症状を示した.このマウスは病理組織学的にもアトピー性皮膚炎の特徴である表皮肥厚と皮下組織への好酸球,マクロファージ,リンパ球,肥満細胞などの細胞浸潤が認められた.また,血液学的解析でも,高好酸球血症と高IgE血症が見られ,脾臓細胞からのIL-4,IL-5などのTh2サイトカインの産生上昇が観察された.さらに,血清でのIL-1&beta;およびIL-18濃度の上昇とこれらのサイトカインの生物学的半減期の遅延が認められた.アトピー性皮膚炎患者においても,カテプシンE量が健常者とくらべて有意に減少していることから,ヒトおよびマウスともにカテプシンEの欠損あるいは低下によりアトピー性皮膚炎発症を惹起することが分った.<br>
著者
山本 健二
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1977

博士論文