著者
鈴木 一成 五十嵐 康人 土器屋 由紀子 赤木 右
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.318, 2008

東アジアのエアロゾルの水溶性成分は、Ca2+、SO42-、NH4+が主要成分となっているため、エアロゾルの化学の大部分をこの3成分で議論できる場合が多い。そこで、Ca2+, SO42-, NH4+の3成分による三角ダイアグラムを用いて大気エアロゾルの化学的特徴を考察した。三角ダイアグラムはH+を考慮する必要のある酸性領域とCO32-を考慮する必要のある炭酸領域に分けることができ、CaCO3とCaSO4、(NH4)2SO4の混合状態を簡単に知ることができる。2002年3月から9月までに富士山山頂の富士山測候所で1日ごとにサンプリングしたエアロゾル試料のデータ(Suzuki et al., in press)を用いた。富士山頂での観測結果から、春季の通常の黄砂時には、ほとんどのCa成分がCaSO4として存在することが特徴的に示された。気塊が汚染地域を通過する際に黄砂粒子と汚染大気由来のH2SO4が混合し反応したと考えられた。夏季には通常の黄砂期間と異なり、SO42-がNH4+と等量濃度でほぼ1:1であり、Ca成分がCaCO3として存在することが明らかとなった。
著者
赤木 右 片山 葉子 土器屋 由起子 五十嵐 康人
出版者
東京農工大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

富士山測候所を利用して、1990年代初めより大気化学観測を続けてきた。しかしながら、2004年9月の測候所無人化が急遽決定され、1992年以来連続観測を行ってきたオゾン濃度をはじめ、大気化学関係の装置の撤収が要求された。その様な状況の中、測候所の協力を得て、特別に割かれた2004年6月18-22日の期間を利用して、従来の体制の中で最後の集中観測を行った。さらに、2005年は太郎坊避難所を中心に集中観測を行い、山頂での測定は、BC、パーティクルカウンターなどに限定して行った。観測項目は以下の通りである。エアロゾルおよび雨水の主要化学成分,粒径分布,雨水の主要化学成分、エアロゾルの粒径分布、^7Be濃度,SO_2濃度,O_3濃度,CO濃度,^<222>Rn濃度、COSの鉛直分布、同位体、NOx、ブラックカーボン。今年度は、梅雨明け前後にあたり、前半は曇りがちで、後半は比較的安定した晴天となったため、降水試料は得られなかった。2002年から2005年までの4年間に行った観測結果を整理し、次の様な結論を得た。まず、山頂と太郎坊とで得られたデータを比較することにより、(1)一般に化学成分の濃度は山頂において低いが、より細かくみると、COS濃度は山頂の方が高い、オゾンは山頂からの変動が先んずる、などの結果を得た。各成分の発生過程、分解過程について制約することが可能である。さらに、(2)自由対流圏の連続観測プラットフォームとしての富士山頂は理想的な地点であり、航空機観測の補完を行い東アジアの大気化学の情報を与える。(3)山体を4000mの観測タワーとみなすことで、微量気体の鉛直分布などの研究が出来る。