著者
大川 卓也 小堀 岳史 赤澤 昭一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1255, 2008

【はじめに】糖尿病治療において運動療法は、食事療法、薬物療法とともに糖尿病治療において最も根本的なものであり、中でも有酸素運動が効果的であるといわれている。当医療法人は、近接するクリニック内にメディカルフィットネスを開設、糖尿病教育入院患者に対し、フィットネスフロアにて運動療法を開始している。その中で、若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【方法および対象】平成19年2月から同年10月までに当院にて糖尿病教育入院となった患者のうち、主治医が積極的運動療法可能と判断し、自転車エルゴメーター(コンビ社製、AEROBIKE 75XIIME)を用いた心肺運動負荷試験(ミナト医科学社製、AE300S)を実施し、AT値を基にメディカルフィットネスにて運動療法を行った者45名(男性23名、女性22名)を対象とした。全員、重篤な認知症、整形疾患や片麻痺などを有しておらず、ADLは自立。平均年齢59.0±12.1歳、入院期間17.4±8.9日、入院前HbA1c値9.6±1.8%、入院直後における食前食後の6ポイントの平均血糖値は239±95mg/dl。心肺運動負荷試験の結果、AT値9.1±2.1ml/min/kg、AT-HR98.6±13.1bpmであった。フィットネスでは理学療法士監視下にてストレッチ、マシンを使用した筋力トレーニングと10~30分自転車エルゴメーターを行った、利用回数7.3±5.0回、1回の利用時間は53±15分であった。<BR><BR>【結果】入院直後と退院直前の血糖値ならびに入院前HbA1c値と退院後HbA1c値の比較では、それぞれ後者が有意に低い結果を示した。AT値は日本循環器学会が発表した60歳台の標準値16.5ml/min/kgの約55%であり、有意に低い結果を示した。AT-HRと予測最大心拍数の50%での心拍数(119±8bpm)を比較すると後者が有意に高い結果を示した。また、AT-HRは予測最大心拍数の約29%という結果であり、なかでも40%以下の者が全体の86%を占めた。フィットネスでの運動中や運動後も重篤な低血糖発作は出現していなかった。<BR><BR>【考察】心肺運動負荷試験の結果から糖尿病患者は健常人に比べ運動耐容能が有意に低いとの結果がでた。そのため、特に運動導入時は、安易に計算のみで設定した目標心拍数では過負荷になる可能性があり、ATレベルでの運動開始が安全であると考える。今後は、退院後の経過観察を行いながら、より良い運動指導が行えるようにしたい。<BR><BR>
著者
中野 優子 赤澤 昭一 中村 聡江 當時久保 正之 内田 優介 中村 弘毅 牛島 知之 高木 浩史
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.368-373, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
12

症例は78歳男性.平成2年に2型糖尿病を発症しメトフォルミンにて内服加療を開始した.平成21年10月頃より,HbA1cの上昇を認め,α-GI投与を開始し,1年後より,腹部膨満感,放屁,軟便と便秘を繰り返すようになった.平成23年3月に臍上部の激痛のため,当院受診した.腹部単純X線検査で大腸の拡張を,腹部CT検査で樹枝状陰影を示す門脈ガスを認めた.α-GI投与による門脈ガス血症(HPVG)と診断し,ボグリボースの内服中止・絶食とし保存的治療を行い,2日後の腹部CT検査で門脈ガスは完全に消失した.本症例ではα-GIの中止によりすみやかにHPVGは消退したが,腸管壊死を伴う場合死亡率はきわめて高率である.HPVGは,腸管粘膜に何らかの損傷があり,ガスなどの貯留などにより腸管内圧が上昇し発症すると考えられる.α-GIの副作用と類似した消化器症状が再出現し,繰り返す場合は,HPVGも念頭に置き,注意深い観察が必要である.