著者
趙 丹寧 駒村 樹里 真崎 昌子 茶山 裕 山本 陽一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PS-006, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究は女性の改姓時の気持ちおよび有職者の特徴,さらに改姓時の気持ちが現在の夫婦別姓賛成態度への影響を検討する。2015年7月から8月まで,結婚時に改姓した女性を対象に質問紙調査を行い,325名の有効回答を得た。改姓時の気持ち,平等的な性役割態度,現在の夫婦別姓賛成態度を尋ねた。因子分析により,改姓時の気持ちは「旧姓への未練と喪失感」,「新姓の自分らしくない感覚」,「新姓の一体感と喜び」の3因子からなることが確認された。有職者は,「旧姓への未練と喪失感」では無職者と有意差がなかったが,「新姓の自分らしくない感」は高く,「新姓の一体感と喜び」は低く,改姓により大きい負担を受けたことが推察される。ロジスティク回帰分析の結果,「旧姓への未練と喪失感」は影響を及ぼしていなかったが,「新姓の自分らしくない感」は現在の夫婦別姓賛成態度を高めており,改姓時の戸惑いが夫婦同姓への否定的な態度を形成する可能性が考えられる。一方,新姓の一体感と喜びは現在の夫婦別姓賛成態度を低めており,改姓時の喜びは夫婦同姓への肯定的態度を形成する可能性が考えられ,改姓伝統の維持要因になり得ることも考えられる。