著者
平井 廣一 足立 清人
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.103-113, 2018-06-14

近代日本経済史の分野では,明治初期の地租改正を契機に成立する地主的土地所有の歴史的性格をめぐって,地租を「近代的租税」と規定するか,あるいは絶対主義下の「半封建的貢租」とするかで見解が分かれている。また地主的土地所有についても,「近代的土地所有」であるか,あるいは「半封建的土地所有」と規定するかで見解の対立が見られる。本稿は,「半封建的土地所有論」が立論の根拠とする「近代的土地所有権の未成熟」論を,民法における土地法ないしは借地借家法の視点から再検討を加える。すなわち,「近代的土地所有権」がイギリスをモデルとして成立したことをもってその典型といえるのか,また「土地用益権の物権構成」は果たして近代的土地所有権が確立するための必須の条件なのかを法理論的に再検討する。