著者
都留 貴志 辻 文生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】我々は2009年より世界COPDデーに合わせて,医療従事者による肺年齢測定(以下,肺機能測定)とその結果説明,禁煙指導,吸入指導,栄養指導,呼吸リハビリ体験などを組み込んだCOPDの啓発活動を行ってきた。そして,2013年の世界COPDデーにおいて,「肺機能測定に参加した人数世界一」という世界記録に挑戦するイベントを企画し,1日の測定人数でギネス世界記録<sup>TM</sup>を大幅に更新した。肺機能測定は測定時の実施環境を整えることが重要であり,同日に同一地域で測定された本結果は非常に精度が高く,信頼性の高いものと考えられる。そこで,COPD問診票であるIPAG質問票(以下,IPAG)と肺機能測定より得られた結果を分析し,大規模なCOPD実態調査を行ったのでここに報告する。【方法】対象はイベントに参加した者のうち,肺機能測定を希望した1020名とした。調査内容は肺機能測定とIPAG,喫煙の有無の計3項目とした。分析対象は,40歳以上で肺機能測定およびIPAGともに記録の不備が無かった714名とした。肺機能測定では1秒率70%未満を気流閉塞と定義し,IPAGでは特異度の高い20点以上をカットオフ値とした。更に,肺機能測定で気流閉塞を認め,IPAGで20点以上であった者を「COPD疑い」と定義し,喫煙率についても算出した。【結果と考察】今回,肺機能測定とIPAGの結果を分析したところ,「COPD疑い」とされた者は13.2%であった。そのうち,継続喫煙者が14.9%,既喫煙者が46.8%であり,合わせると61.7%にものぼり,喫煙とCOPDの発症が深く関与していることを裏付けていた。しかしながら,本調査では「COPD疑い」とされた者の中で非喫煙者が38.3%と非常に高く,これまで考えられていた以上に受動喫煙を含む環境因子が大きな影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
著者
中嶋 仁 一圓 未央 奥川 和幸 東 大輝 松本 浩希 真田 将幸 加納 一則 辻 文生 中川 法一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D3O1160, 2010

【はじめに】包括的呼吸リハビリテーション教育入院(包括的呼吸リハ教育入院)の目的の一つは、運動習慣や健康増進に向けた自己管理能力を身につけることである。そして身体活動量の向上を図り、得られた効果を退院後もできるだけ長く維持させることである。しかし包括的呼吸リハ教育入院における効果報告は、呼吸困難感の軽減、運動耐容能の改善、健康関連QOLおよびADLの改善がほとんどで、身体活動量の変化を報告したものはほとんどない。身体活動量の変化を把握することは、呼吸や運動機能の効果を知るだけでなく情意や心理面に伴う変化を知るうえでも重要である。そこで今回の研究目的は、包括的呼吸リハ教育入院における運動習慣の実態を把握するために、教育入院前と退院後の身体活動量の変化を調査することである。また、運動耐容能、健康関連QOL、ADLの変化も合わせて調査する。<BR>【対象】対象は、当院における包括的呼吸リハ教育目的に入院した独歩可能な慢性呼吸器疾患患者16名(COPD15名 気管支拡張症1名)、男性15名、女性1名、平均年齢69.7 ±13.3歳であった。喫煙者、継続調査が出来なかった者、骨関節障害、脳血管障害を有す者は本研究より除外した。<BR>【方法】運動耐容能、ADL、健康関連QOLの評価を入院前1か月と退院後1か月に行った。運動耐容能の評価は6分間歩行テスト(6MWT)をおこなった。ADLの評価は、千住ADL評価表を用いた。健康関連QOLは疾患特異的尺度のThe St.George'S Hospital Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いた。<BR>身体活動量の評価は、スズケン社製の多メモリー加速度計測装置付き歩数計(ライフコーダー)を用いて計測した。計測値は、入院前1か月間と退院後1か月間の起床から就寝までの1か月間の最大歩数と1日の平均歩数とした。統計学分析は、入院前と退院後の各評価項目の平均値を求めt検定を用いて検討した。<BR>【説明と同意】今回の研究は、当院の倫理委員会の規定に基づいて実施した。本研究の趣旨、内容、中止基準および個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。<BR>【結果】6MWTは入院前が258.6±107.3m、退院後が317.6±317.9mであった(P<0.05)。千住ADLテストは、入院前が66.87±16.12点、入院後が78.35±22.28点であった(P<0.05)。SGRQの総得点は入院前が40.18±21.48点、入院後が35.05±18.04点であった(P<0.05)。身体活動状況としての1日の平均歩数は入院前が3416±2639.8歩、入院後が5491±2853.6歩であった(P<0.005)。最大歩数は入院前が5405.5±3751.9歩、退院後が8553.8±4492.9歩であった(P<0.001)。<BR>【考察】当院における包括的呼吸リハ教育入院は2週間であるが、諸家の報告通り運動耐容能、健康関連QOL、ADLは入院前と比較して退院後は有意に改善した。身体活動量は、入院前と比較して退院後は有意に増大した。以上の結果より、多職種がチームを組みさまざまな側面から介入する包括的呼吸リハ教育入院は、自己管理能力を高め運動習慣をつけることが出来たと考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は、包括的呼吸リハ教育入院がADLやQOLだけでなく身体活動量も向上させることが明らかになったことである。退院後の身体活動量を把握することは、包括的呼吸リハビリテーション教育入院プログラムを再構築するうえで重要である。<BR>