著者
池田 敬子 小山 一 鈴木 幸子 辻本 和子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アミノ酸誘導体など食品や食品由来成分のもつ微生物不活化(消毒)活性を利用したスキンケアによい新しいタイプの消毒薬の開発を念頭に食品由来成分の探索とその作用機構の解析、ならびに実際の応用に向けたウイルス伝播力の解析を行った。塩基性アミノ酸のひとつアルギニンの持つ殺菌作用(ことに緑膿菌への)や梅酢ポリフェノールなどのウイルス不活化作用を見出し、ことに呼吸器感染症起因ウイルスへの消毒作用を明らかにした。また、医療環境を汚染したウイルスの持つ伝播力を汚染後の時間との関係において定量的に解析した。
著者
辻本 和子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

〔目的】エビデンスに基づいた感染防御の基礎データを得ることを目的に、小学生が日常環境で触れる材料に付着したウイルスがどのくらいの時間感染性を保っているかを調べた。【材料と方法】ウイルスには単純ヘルペスウイルス1型(HSV)、インフルエンザA型Aichi株(IAV)、ポリオウイルスセービンワクチン株(PV)を用いた。適当量を分取した材料にウイルス液2μlを置いて汚染し、経時的にウイルス希釈液を加えた試験管に汚染材料を移し、回収される感染性ウイルス量を定量した。【結果と考察】1、檜(机)や砂(運動場)ではウイルス液が汚染直後に吸収された、檜は汚染5分後に全ウイルス種で感染性が失われたが、砂は15分間有意に感染性が保たれた。2、ペットボトル、ゴム、ランドセル、など撥水性素材では15分から20分間は汚染直後と変わらない感染性が全ウイルス種で見られた。3、ステンレスではウイルス種によって挙動が異なったが5分から10分程度で感染性が低下した。4、種々の布地では汚染すぐにウイルス液を吸収するものは感染性維持も短かったが、撥水性では長かった。5、IAVで共存タンパク質の影響をランドセルを用いて調べた。0.5%BSAを加えてもウイルスの感染性に差はなかった。以上の結果は、ウイルス液の乾燥を早める材料では感染性維持の時間が短く、撥水性で液が残る材料では感染性維持が長い事を示す。ステンレスでは液が残っても金属による不活化の関係か感染性維持は比較的短い。液を乾燥させやすい素材か否かは、集団環境での接触感染経路になりやすいか否かに関連すると言える。感染性維持が15分以上の材料が多種あるが、通常ヒトがくしゃみをした後や感染者が触れた材料を15分間も気に留める人はいない事は留意点であると言える。【今後の課題】定量的に検出する方法が確立され結果も得られ始めており、材料の範囲を広げ消毒法など更に応用へ繋げたい。