著者
辻野 泰之 石田 啓祐 和田 秀実 平山 正則
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.12, pp.680-685, 2010 (Released:2011-04-09)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

徳島県牟岐町楠之浦地域に分布する四万十帯牟岐メランジュ下部セクションより,後期白亜紀アンモナイトを発見した.このアンモナイトは,ロシア・サハリン南部マカロフ地域のクラスノヤルカ層の岩相ユニットK2(マストリヒチアン階)から報告されたGaudryceras cf. tombetsenseに最も似ている.最近のジルコンU-Pb年代に関する研究に従うと,牟岐メランジュ下部セクションの年代は古第三紀初頭を示す.現時点では,楠之浦地域から発見された後期白亜紀アンモナイトは,古第三紀堆積物である牟岐メランジュ下部セクションの中に外来岩塊として含まれたと考えるのが妥当である.
著者
辻野 泰之
出版者
徳島県立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タイプ標本は、種を定義する上で基礎的な資料であり、学術的に重要である。しかしながら、日本の古生物学分野において、タイプ標本の所有者や保管場所の情報は、記載論文以降、更新されていない。その後、タイプ標本が行方不明になったケースや、収蔵場所が変更になったケースも少なくない。また、タイプ標本の観察は、主に分類学において不可欠であるが、タイプ標本の閲覧が容易でないため、若手研究者が分類学を敬遠する原因にもなっている。そこで本研究は,日本産白亜紀アンモナイトを例に古生物タイプ標本の所在を確認するとともに、3Dスキャニングを行い、タイプ標本の3Dデジタルデータベースの構築を試みた。
著者
辻野 泰之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.3, pp.122-129, 2009-03-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

北海道古丹別地域に分布する蝦夷層群最上部を函淵層に帰属させた.この層準は砂岩優勢の砂岩泥岩互層で構成され,ハンモック状斜交層理が発達する.本研究では,古丹別地域の函淵層からいくつかのアンモノイド類やイノセラムス類を産出したものの,時代決定に有効な大型化石は得られなかった.しかしながら,古丹別および羽幌地域の羽幌川層最上部からは,下部カンパニアン中部-上部を示すSphenoceramus orientalisやS. schmidtiが報告されており,古丹別地域の函淵層はS. orientalis−S. schmidti帯の最下部に対応すると考えられる.さらに函淵層が,古丹別地域で確認されたこと,また羽幌地域や達布地域の羽幌川層最上部においても,すでに上方粗粒化の傾向が見られることは,羽幌-古丹別-達布地域の広域において函淵層が堆積していた可能性を示す.