著者
近江 崇宏
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.151-155, 2018-05-01 (Released:2018-05-30)
参考文献数
11

近年,高頻度金融データと呼ばれる取引単位の大規模データが利用可能になったことを背景として,このようなデータを解析するための手法が求められている.その中で最近,点過程が高頻度金融データを解析する有用な手法として注目を浴びている.点過程はある注目する事象が発生するタイミングを記述する確率モデルであり,その一種であるHawkes(ホークス)過程は実際に観測されるようなクラスター状に起こる取引や注文の発生パターンを再現できる.この解説ではこのような点過程を用いたモデリングについての簡単なレビューを行うとともに,それを用いた高頻度金融データの解析に関する私たちの研究についての解説を行う.
著者
近江 崇宏
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、空間的に広がったシステムが示す協調的なダイナミクスのモデルリングを目的としている。主な対象として神経細胞集団のスパイク発火を想定している。しかしながら近年、神経細胞のスパイク発火と地震発生の現象論的な類似性が指摘されており、より発展的な観点から地震時系列についても対象として、研究を行ってきた。本研究課題1、2年目においては、主に成果の出ていた地震の時系列解析の研究について報告した。本年度の報告では、本課題の中心テーマである神経細胞集団のスパイク発火についての解析の研究についての詳細な報告を行う。まず単一の神経細胞のスパイク列の発生率をヒストグラムを用いて精度よく推定する手法の開発を行った。既存の手法はスパイクがポアソン過程に従って生成されているという想定に従っているが、実験で観察されるスパイク列はポアソンではないことがわかっている。そこで本研究では現実のデータに適用可能なように、既存の手法をより一般の場合への拡張を行った。そして、数値実験、実データを用いて、提案手法の有効性を示した。スパイクデータからの発生率推定は神経科学では実験データ解析の標準的手続きである。さらに本手法は簡潔であり、統計解析の基礎知識を持たない研究者でも容易に実装が可能になっている。そのため今後本提案手法が多くの研究者に使われると考えられる。また本研究は理論神経科学の一流紙Neural Computation誌から出版され、2011年度の神経回路学会において大会奨励賞を与えられた。二つ目の研では神経細胞集団のスパイク列から動物が将来起こす行動のタイミングを予測する研究を東北大学医学部のグループと共同で行った。24個の補足運動野の神経細胞のスパイク列から約1秒のタイミングで行動タイミングの予測が可能であることを明らかにした。この結果は脳信号を用いた外部機器の操作(BMI)への応用においても重要な結果であると考えられる。