著者
海原 康孝 青木 梢 三宅 奈美 香西 克之
出版者
日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.92-96, 2007-03-25
被引用文献数
1

11歳8か月女児の下顎右側第二大臼肉歯の異所萌出および11歳6か月男児の下顎左側第一小臼歯の位置異常の処置に対し, リンガルアーチ, セクショナルワイヤー(ニッケルチタン系.016"×.022")およびクリンパブルフックを用いて咬合誘導を行った。その結果, 有効性は以下のような点であった。1. リンガルアーチの装着後, 患歯にブッカルチューブもしくはブラケットを装着し, セクショナルワイヤーにクリンパブルフックを装着するだけの簡単な装置で行える。2. 手技が容易であるため, 短時間で施術が終了する。3. クリンパブルフックの装着によるワイヤーの活性化は, 下顎第一臼歯と第二大臼歯の間のような、歯列弓の後方の操作しにくい部位においても容易に行えた。4. 本装置の装着期間は1~3か月と比較的短かった。5. 本装置の装着期間中に患児が苦痛や違和感を訴えることはなかった。6. 同症例とも後戻りを認めなかった。以上より, この方法は技術的に容易で, 患者と術者双方において負担が少なく、予後が良い非常に有効な方法であることが示唆された。For treatment of two cases of ectopic eruption of the mandibular right second molar and malposition of the mandibular left first bicuspid, we conducted MTM using a lingual arch, sectional wire and crimpable hook. The results showed the effectiveness of this as described below.1. The treatment is as imple procedure involving the fitting of the lingual arch, then attaching a buccal tube or bracket to the tooth to be moved, and finally attaching the crimpable hook to the sectional wire.2. Because the technique is simple, the procedure can be completed in a short time.3. By attaching the crimpable hook, activation of the wire is easily done even at sites at the back of the dental arch where it is difficult to operate, such as between the mandibular first and second molars.4. The period of treatment is comparatively short at 1 to 3 months.5. The affected infants did not feel pain or discomfort during treatment.6. Retrogression was not observed in either case.This method is technically simple, places little burden on either the patient or the practirioner, and seems to be an extremely effective method with good outcome.
著者
大竹 千鶴 高木 正道 田口 洋 野田 忠
出版者
日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.37-44, 2003-03-25
参考文献数
32
被引用文献数
6

時代の移り変わりの中で,少しずつ変化している日本人の食事について,時代の変遷により,食生態が変化し,噛む回数や時間が変わることを,どこまで正確に検証できるのか,時代を反映する食事として学校給食をとりあげ,その復元食による咀嚼実験を試行し,咀嚼との関連について検討した.<BR>今回の実験では,現代の給食の方が昭和30年代および50年代より咀嚼回数も咀嚼時間も減少するという結果が出たが,これは時代の変化というより,選択した献立の差と考えられた.<BR>時代の変遷による食生態の変化を,代表的献立で実験する場合,日常の食をいくつかの献立で代表させるのは難しく,測定した咀嚼回数や咀嚼時間の比較で時代の変遷を論じることはさらに難しいと思われた.<BR>献立,素材,調理方法により,咀嚼回数も咀嚼時間も大きく変わるものと考えられ,学校給食だけでなく,普段の食生活においても,噛みこたえのある食品を使ったり,素材を大きく切って調理したりなど,さまざまな工夫をすることによって,食事がよりよいものとなると思われた.
著者
香西 克之 鈴木 淳司 内川 喜盛 木本 茂成 田村 康夫 中島 一郎 小野 俊朗 有田 憲司 新谷 誠康 福本 敏 海原 康孝 林 文子 土屋 友幸
出版者
日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.517-523, 2008-12-25
被引用文献数
3

本邦における小児歯科学教育の現状を調査するために,全国29歯科大学・大学歯学部の小児歯科学担当講座(分野)に対してアンケート調査を行った.アンケートは小児歯科学授業(講義),基礎実習,臨床実習の3項目について行った.アンケートの結果から以下の実態が確認された.授業では,ほとんどの大学で小児歯科,あるいは成長,発達などの小児歯科学と関連のあるシラバスの科目名称を有していたが,小児歯科学単独のシラバスを持たない大学もあった.授業時問は平均55時間程度であったが,最も少ない大学と多い大学では6倍の差があった.基礎実習は平均35時間行われていたが,国公立大学の平均に比べ私立大学は有意に多かった.臨床実習実施期間は平均11.9か月で大学間の差は少なかったが,実施時期は国公立大学に比べ私立大学が約6か月程度早期に行われていた.また,臨床実習での学生の参加形態や評価方法などは大学問で大きな差があった.<BR>以上のことから,小児歯科学の教育は各歯科大学・大学歯学部で大きな差があることが確認された.特に授業時間や実習時間は私立大学が多い傾向にあった.また臨床実習の実習期問は大学問で大きな差はないが,開始時期は私立大学が国公立大学に比べ有意に早いことが示された.