著者
阿部 東 工藤 貢次 近藤 格 斎藤 和夫
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.179-186, 1969

青森県内で採集されたクワガタムシ科(Lucanidae)の4属5種について雄の染色体を調べた.それらの種名, 染色体数および性決定様式を一括して第1表に示したが, 観察結果は次のように要約される.ミヤマクワガタLucanus maculifemoratusは染色体数がn=13(I, II)であつて, 第1分裂でXY対を識別できる(第1, 2, 3図).ノコギリクワガタProsopocoilus inclinatusは2n=19, n=10(I), 10, 9(II)である(第4, 5, 7, 8, 19, 20, 21, 22図).この結果は利岡・山本(1937)の観察と一致する.第1分裂では, 一極に向つて先行する性染色体(X染色体)が認められる(第6, 19, 20図).アカアシクワガタNipponodorcus rubrofemoratusは2n=10, n=5(I, II)であつて(第9, 10, 11, 12図), 大型のV型染色体が精原細胞には一対, 第2精母細胞に一ケ含まれている(第9図のV, 第12図のV).またこの種でも第1分裂でXY対を識別できる(第11図).コクワガタMacrodorcas rectus(第13, 14, 15図)とスジクワガタMacrodorcas binervis(第16, 17, 18図)は染色体数は同じであつて共に2n=18, n=9(I, II)である.性染色体構成は雄がXYと推定される.従つてXO型であるノコギリクワガタはこれらのうちでは特異な種である.なお, 第1分裂でのXY対を比較すると対合様式はミヤマクワガタとアカアシクワガタがrod型であつてneo-XY型であるDorcus parallelopipedusと異つている.またアカアシクワガタとコクワガタおよびスジクワガタの染色体数の関係が注目される.
著者
近藤 格
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.17-21, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
5

プロテオーム解析による早期診断のバイオマーカー開発は盛んに行われてきた.しかし,臨床的な有用性が証明されて病院で使用されているものは未だ存在しない.それは,研究室でのバイオマーカー開発の限界に起因する.研究室では,常に同数に近いがん患者と非がん患者(あるいは健常者)のサンプルが比較される.しかし,通常の健康診断であれば,圧倒的にがん患者の方が少ない.そのため,実験室の条件では感度・特異度の高い早期診断バイオマーカーであっても,現実の世界ではたくさんの間違った検査結果を導くことになる.同数に近い数で発生する事象を検出ないし予測するバイオマーカーを研究対象として設定することが,現実的である.例えば,予後,再発,治療抵抗性を予測するバイオマーカーである.病態や罹患数など検査での運用を想定した臨床的な視点からバイオマーカー開発を捉えることが,成功するバイオマーカー開発のポイントではないだろうか.