- 著者
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今村 彰生
速水 花奈
坂田 雅之
源 利文
- 出版者
- Pro Natura Foundation Japan
- 雑誌
- 自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, pp.162-172, 2020 (Released:2020-09-29)
- 参考文献数
- 13
本研究は,環境DNAによりニジマスOncorhynchus mykissの分散ポテンシャルをマップ化し,さらに環境DNAメタバーコーディングにより在来魚群集の生息状況をマップ化することを目的とした.その上で,在来魚群集にとって好適な水系や生息地を抽出し,ニジマスの分散から受けるリスクの大小を視覚化した「ハザードマップ」を作成し,在来魚群集の保全への具体的な指針の提示を目指した.調査地はPNF27期助成での調査地の3地点と29期に合わせて追加した地点の計16地点とした.2018年10月—2019年8月にかけて1ヶ月に1回の環境水の採集を計11回実施しMiFish法によるメタバーコーディングを実施した.その結果,サケ科やコイ科を含め12科36群の魚類を検出した.地点ごとの種数の範囲は12–23種で,フクドジョウBarbatula barbatula,ドジョウMisgurnus anguillicaudatus,ハナカジカCottus nozawaeが全地点で検出され,外来サケ科のニジマスは16地点で検出された.国内外来種であるナマズも2地点で検出された.全体として,ニジマスを除くと在来種の比率は高かった.重点を置いているサケ科については,ヤマメ(またはサクラマス)Oncorhynchus masou sspp.の検出地点が15,アメマス(広義イワナ)Salvelinus leucomaenis sspp.が12,オショロコマSalvelinus malma sspp.が11,サケ(シロザケ)Oncorhynchus ketaが11と,在来サケ科は全地点で検出された.立地条件を加味して調査地点ごとに整理すると,石狩川中流域(旭川市内)でも検出種数は多く,なかでも旭川市の中心の調査地点旭橋では最大の23種が検出された.また,鱒取川やピウケナイ川という石狩川への流入河川と忠別川の調査地点で検出種数が多い傾向が見られたが,石狩川の支流でもオサラッペやノカナンでは検出種数が少なかった.また,忠別ダムの周囲は上流側下流側を問わず,全体として検出種数が少なかった.以上から,忠別ダムの周辺での淡水魚相が劣化傾向にある一方で,忠別川下流および忠別川と石狩川との合流点より下流において淡水魚相が豊かである傾向が示された.ニジマスとの排他的な関係については計画当初の予測に反して検出できず,今後の検討課題である.