- 著者
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進藤 兵
- 出版者
- 都留文科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
1.本研究は、石原都政に関して、都市政治学的アプローチに拠りながら、大ロンドン行政庁(GLA)との比較を行うことを通して、その現代的特質を解明することを目的としていた。当初の研究計画においては、初年次(2005年度)には先進諸国の地方自治体における現代都市政治に関する理論研究を進め、第2年次(2006年度)には、東京都およびGLAにおけるいくつかの政策分野についての比較研究を行い、第3年次(2007年度)には東京都知事選挙の分析と行うとともに、全体の総括を行う予定であった。2.研究の成果について、理論面と東京・ロンドンの具体的な都市政治に関する実証面とに分けて述べる。 まず理論面に関してであるが、(1)現代先進諸国における1970年代までと1990年代以降とのそれぞれの経済-社会-政治をトータルに捉えれば、「国民経済の枠内でのフォード主義経済」から「グローバル化しつつある知識集約型経済」へ-「国民社会の統合」から「多文化主義/新保守主義の拮抗」へ-「ケインズ主義型福祉重視国民国家」から「シュムペーター主義型就労重視脱国民的脱国家化」へ、と要約できること、(2)この図式は、地方自治体でありながら世界都市として国民国家やグローバル経済の動向と密接不可分である東京やロンドンのような都市における政治には、おおむね妥当すること、(3)ただし上記の構造変動にはいくつかのヴァリエーションがあること、すなわち現代都市政治には少なくとも2つのタイプの公共性が並存していること、(4)具体的には、石原・東京都政に現れているような「新自由主義プラス新保守主義型」とリヴィングストン・GLA政治に現れているような「維持可能性のある福祉国家型」という2つのタイプの都市政治が存在すること、を明らかにした。次に実証面であるが、(1)2007年4月の東京都知事選挙について分析を行うことが出来たこと、(2)GLAについては4年に一度の市長選挙・議会選挙は本研究の終了直後である2008年5月1日に行われたが、本研究によって購入することが出来た文献・機材や行うことが出来たロンドン現地での調査(2007年3月)によって、この2つの選挙についても分析行うことが出来たこと(その内容については、研究成果報告書の中に収録する予定である)、(3)具体的な政策分野としては、本研究に着手した後に教育改革の分野が重要であることが次第に明らかになったことから、教育政策についても検討したこと、が成果であった。3.上記の点いずれについても、石原都政についてはジャーナリスティックな取り上げ方がなお多数を占め、GLAについては具体的な研究が日本ではあまり進んでいない中、比較的ユニークな成果を上げることが出来たと考えており、現代日本の地方自治および都市政治の将来像について学界に一定の貢献をなしえたと思料する。