著者
遠藤 啓生 藤岡 正博 羽方 大貴
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.435, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

生物多様性に配慮した森林管理を実現するためには、人工林管理が森林性哺乳類に与える影響についての情報が必要である。そこで、2016年5月~6月に山梨県との県境部に近い長野県にある筑波大学川上演習林(標高1,400-1,780m)のカラマツ林2サイト(各4ha)において、半分を除草剤樹幹注入によって低木・亜高木を枯死させる枯損処理区、残りを対照区とし、樹上性哺乳類であるヤマネへの影響を調べた。各区に5か所の巣箱ポイントを設け、各ポイントに5個ずつ、総計100個の巣箱を設置した。2016年には7月~9月にしかヤマネ調査を行えず、巣箱利用率に違いは見出せなかった。2017年にはヤマネの全活動期間である5月上旬~10月中旬に隔週で調査した。2017年の結果を、巣箱ポイントごとのヤマネの在不在を応答変数、処理と調査セッションを説明変数、調査サイトと巣箱ポイントをランダム効果とする一般化線形混合モデルで解析したところ、ヤマネの巣箱利用率は枯損処理区よりも対照区で高かった。枯損処理区で利用率が低いのは特にシーズン前半であった。同時に行った開花結実調査の結果と合わせて、春から初夏に様々な樹種が開花結実することがヤマネの生息に重要と考えられる。