著者
大井 龍司 遠藤 尚文 中村 正孝 林 富 仁尾 正記
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

胆道閉鎖症初回根治手術時生検肝組織11例、同じく根治手術時摘出肝外胆管3例、肝十二指腸靭帯内リンパ節3例を対象として用いた。対照として地疾患で開腹生検を施行し肝私見切除を要した患児(神経芽細胞腫、小児肝癌等)の肝組織を用いた。まずレオ3型ビールスを培養し、それよりRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。次にレオ3型ビールスに特異的なprimerをcomputer解析により決定した。さらにこのprimerを用いてPCR法にて目的とするDNAを増幅し、その特異性を確認し、感受性について検討した。充分な特異性、感受性が得られたことを確認の後、上記方法を用いて本症患児より採取された対象組織につきレオ3型ビールスの検出を試みた。なお対照例についても上記と同様な操作を行なった。Primer1とPrimer2を用いたrepeated PCR法による胆道閉鎖症患児生検肝組織、肝外胆管ならびに肝十二指腸靭帯内リンパ節よりレオ3型ビールスRNA検出の結果は、Table1のごとく目的とする増幅反応物は検出されなかった。まとめると胆道閉鎖症患児の肝、肝外胆管、肝十二指腸靭帯内リンパ節を対象として、PCR法を用いてレオ3型ビールス核酸の検出を行なったが、上記対象いずれにもそれを検出することはできなかった。従って本症の病因としてレオ3型ビールス感染は否定的と思われる。