- 著者
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那須 佳子
中沢 文子
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.10, pp.935-941, 1981 (Released:2008-11-21)
- 参考文献数
- 4
(1) アントシアニジン塩化物結晶(ペラルゴニジン,シアニジン,デルフィニジン,マルビジン)では77 K以上において発光は観測されなかった. (2) アントシアニジン・エタノール溶液の77 Kにおける発光測定を行った結果,ペラルゴニジンでは2.13 eV, 2.02 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,シアニジンでは2.09 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,デルフィニジンとマルビジンでは2.07 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が観測された. (3) ペラルゴニジンの2.13 eV発光帯,シアニジンの2.09 eV発光帯,デルフィニジンとマルビジンの2.07 eV発光帯は,最も主な可視吸収帯である2.2~2.3 eV吸収の逆過程の発光であることが暗示され,これらの発光帯と吸収帯に関与する電子状態は同じであると考えられた. (4) 1.96 eV発光帯は4つのアントシアニジンにおいて共通に現れ,基底状態より1.96 eV高エネルギー側に,吸収では観測されなかった最もエネルギーの低い電子状態が存在することが明らかになった. (5) 2.2~2.3 eV吸収帯の高エネルギー側の吸収帯である3.0 eV, 3.4 eV吸収帯の光を照射した際も, 2.07~2.13 eV発光帯, 1.96 eV発光帯が現れ,これより,電子を高いエネルギー状態に励起しても,エネルギーの最も低い2つの電子状態に緩和してきてその状態から発光することが明らかになった. (6) シアニジンの配糖体であるクリサンテミン塩化物結晶において1.90 eVに発光の存在すること,シアニン塩化物結晶では発光が存在しないことが明らかになった.また,クリサンテミン水溶液において1.88 eVに発光が存在することも明らかになった.