著者
井岡 邦仁 郡 和範
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

(1) GeV から PeV に伸びる宇宙線のスペクトルを AMS-02 実験が精密に観測し、ヘリウムと炭素のスペクトルが水素のスペクトルよりもハードであること、ヘリウムと炭素のスペクトルは同じであること、また、どれもが200GeVに折れ曲がりがあること、が分かった。それらを説明するには、宇宙線がスーパーバブルのコアのような化学的に非一様な環境で加速されたと考える必要があることを議論した。(2) PeV 天体の候補である中性子星連星の合体は、r過程元素の有力な起源の候補でもある。しかし、もしそうだとすると、中性子星連星合体の飛散物質の残骸において r過程元素がほとんど粒子加速されず、r過程元素の宇宙線が異常に弱くなければいけないことを初めて指摘した。これは、超新星残骸の逆行衝撃波での粒子加速が非常に非効率であること、あるいは、中性子星連星の合体はr過程元素の起源ではないことを意味する。(3) PeV 天体の候補である ultra-long GRB(超長期ガンマ線バースト)は起源が分かっていないが、最近非常に明るい超新星が付随していることが判明した。この超新星を説明できるモデルとして、青色超巨星の崩壊、生まれたてのマグネター、白色矮星の潮汐破壊イベントが可能性としてありえることを議論した。(4) 超大質量星が重力崩壊してジェットを放出すると、ジェットが外層を通過する間にエネルギーを外層に渡し、非常に明るい超新星のように輝くことを提案した。
著者
郡 和範
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

4年間で、関連の深い論文34本、まとめの論文を1本執筆したことが最大の成果である。2013年のヒッグス粒子発見を受け、それと無矛盾な最小超対称性理論のパラメーター領域は、厳しく制限されることとなった。そのパラメーターの範囲内で、超対称性粒子がダークマタ―になる条件と、長寿命荷電粒子がビッグバン元素合成に与える悪い影響を逃れる条件を課す場合、さらにパラメーター領域は制限される。我々はsinglinoという粒子を一つ導入することにより超対称性理論を拡張すれば、そのsinglinoがダークマタ―となり、ビッグバン元素合成でのリチウム7問題とリチウム6問題を同時に解決することを示した。