著者
野尻 美保子 兼村 晋哉 阿部 智広
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

[1]LHC 実験の新粒子探索では、大きなバックグラウンドとなるQCD 相互作用が問題になるが、その QCDの特性を研究し新粒子を探索する新しい方法を多数提案した。[2]宇宙に存在することが明らかな暗黒物質を含む模型について総合的に検討を行い、LHCでの模型の検証可能性を明らかにした。[3]ヒッグス粒子の発見に伴いRandall-Sundrum 模型, 超対称模型等についてHiggs の性質の測定で新物理を詳細を明らかにできることを示した。電弱対称性の破れの背後の物理や標準理論で説明できない諸現象(暗黒物質、バリオン数生成、ニュートリノ質量)とヒッグス物理の関係を研究した。
著者
溝口 俊弥
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非コンパクト剰余類に基づく N=2 超対称共形場理論によって特異的なカラビヤウ多様体を記述し、それをヘテロティック弦に応用した。一般の極小共形場理論が結合した系での局在場のスペクトラムを導き、特に3世代模型を構成した。一方、孤立特異点をもつ非コンパクトカラビヤウが、NS5-ブレーンと双対である事実に基づいて、交差する 5-ブレーンを表す超重力解中のゲージーノのディラック方程式を解き、 E6 の 27 および 27* に属するゼロモードがそれぞれ2および1世代存在することを示した。さらに、それが超対称シグマモデルの結果と一致することを示し、準南部・ゴールドストンフェルミオンによる世代統一の可能性を指摘した。
著者
家入 正治 高橋 仁 皆川 道文 澤田 真也 成木 恵 佐藤 皓 三輪 浩司 黒澤 真城
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

原子核・素粒子反応実験において、毎秒10^7までの画像事象を選別し処理可能な『超高速イメージ撮像管』の開発を行った。蛍光体の残光に頼らず、撮像管内部の電子の移動を制御する事により、画像保持すなわち"イメージ遅延機能"を有する。試験機は完成し、基本性能試験を行った。
著者
長谷川 琢哉 西川 公一郎 小林 隆 丸山 和純 石井 孝信 中平 武 坂下 健 荻津 透 木村 誠宏
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

物質優勢宇宙創成の謎に迫るべく必須の液体アルゴン三次元飛跡検出装置について、試作機を構築し特性を把握した。今回の性能評価により、同測定装置は、T2K前置ニュートリノ測定装置に必要とされる能力を有することが結論付けられた。20ktから70ktの液体アルゴン三次元飛跡検出装置を、ニュートリノ源から2300kmの超長基線長かつ大深度地下(3000m水密度相当以上)に設置して研究を行えば、ニュートリノ質量階層性、レプトンのCP対称性の研究に関して、他の計画の追随を許さないものとなることが示された。又、大深度地下に測定装置を設置することが、陽子崩壊探索の感度向上に重要であるということが確認された。
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

宇宙論的な非線形摂動論における独創的な理論手法である「統合摂動論」の枠組みの中では天体のバイアスを一般的に扱うことができる。天体バイアスの具体形については不定性があるが、バイアス関数というものが重要な役割を果たす。本研究では、いくつかの異なるバイアスモデルについて具体的にバイアス関数を求めることに成功した。さらにそれを用いて最終的な観測可能量であるパワースペクトルや相関関数などがバイアスの違いによってどのような影響を受けるかを系統的に調べた。その結果、大スケールになるほど、また、高赤方偏移になるほど、バイアスモデルによる違いは小さくなることを明らかにした。
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

宇宙の大規模構造という観測量から、初期宇宙の物理を探求するための手法を模索する。これまでに研究代表者は、大規模構造の統計量について準非線形領域で力学的な統計解析を系統的に行う手法である統合摂動論を確立した。この理論を初期宇宙における具体的な問題に応用することにより、独創的な成果を得ることができる。具体的な研究課題は2つある。ひとつめは、インフレーション理論において励起される可能性のある初期ゆらぎの非ガウス性を宇宙の大規模構造の統計解析によって制限することである。ふたつめは、初期宇宙に形成される可能性のある原始ブラックホールがどのような空間的分布をするのか調べることである。
著者
三宅 康博 永谷 幸則 吉田 光宏 林崎 規託 荻津 透 大西 純一 鳥養 映子
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

透過ミュオン顕微鏡に用いる超低速ミュオンに厚い試料への透過能をもたせるための再加速装置である5MeVミュオンサイクロトロンが完成した。本年度、サイクロトロンの主磁石を作成するとともに、サーチコイルを用いた超精密(10(-5)精度)かつ高勾配(10%/cm)の磁場を計測可能な3次元磁場測定装置を開発し、これらを用いて精密磁場測定、磁場計算と磁極調整(シミング)をくりかえし、目標とする最大0.5T強度で10(-5)精度の等時性磁場の形成に成功した。磁場測定装置の開発では、低膨張ガラス立方体にコイルを巻き、超低ドリフトアンプ、24bitADC、14bitロータリーエンコーダー、FPGA処理装置を組み合わせ、必要な精度を得た。また、サイクロトロンに高安定な108MHzと324MHzの電磁波(RF)を供給する発振器、プリアンプ、パワーアンプ等も開発した。GPS原子時計に同期した源発信をPLLにより上記周波数に変換し、複素変調器、複素復調器、ADC、DACとFPGAを組み合わせたフルデジタルなRF制御系の開発も進めた。並行して、透過ミュオン顕微鏡に用いる超伝導対物レンズの超伝導コイルのヘリウム冷却・起動試験を実施し、目論見通りの磁場(最高4.2T)分布が得られる事を確認した。また、ミュオン回折実験のデーター解析も進めた。
著者
千田 俊哉
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

多段階で複数の種類のクライオプロテクタント溶液にソーキングする「多段階ソーキング法」の手法を確立し、CagA結晶の質を10オングストローム分解能から3.1オングストローム分解能に改善した。CagA結晶の場合には、二段階で二種類のクライオプロテクタント溶液(トレハロースとPEG1000)にソーキングした場合に最も分解能が改善された。さらに、この手法を他のいくつかのタンパク質結晶にも適用し、当初3.5オングストローム分解能の回折しか生じなかった結晶の質を最終的には2.1オングストローム分解能まで改善することができた。
著者
久徳 浩太郎
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

今後、アメリカのLIGOや日本のKAGRAによって、ブラックホールと中性子星との連星が合体する際の重力波が検出されると期待されている。この重力波からは、中性子星の半径や、さらにそれを構成する高密度物質の状態方程式を引き出せる。本研究では、観測と比較するのに必要な、正確な重力波波形を導出するシミュレーションに向けて、円軌道の連星の初期条件を用意する手法を開発した。連星の様々なパラメータに対し、試した全ての場合で離心率を0.1%程度に抑えることに成功している。
著者
萩原 薫 神前 純一
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では欧州原子核研究機構の LHC 加速器の実験による新しい物理の発見を確実に実現するための物理解析ツールを開発した。グラフィックス・プロセッシング・ユニットの利用で多重ジェット生成過程を含む物理現象のシミュレーションの二桁近い高速化が実現され新しい物理現象に対するバックグランドの推定の高速化と精密化が可能となった。開発中のパートンシャワーとの接続により更なる精密なシミュレーションが期待される。
著者
松村 知岳
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インフレーション仮説を検証する宇宙マイクロ波背景放射の偏光測定では広帯域観測が必須となる。望遠鏡に用いる光学素子は、表面反射を抑えるために反射防止膜を施す必要があるが、従来のコーティングによる極低温で広帯域を実現するのは難しい。本研究ではモスアイ加工を光学素子表面に施すことで広帯域反射防止膜を作成した。光学素子材料としてRexolite、アルミナに対して、ダイシングソーやレーザーを用いた加工にてプロトタイプを作成、またその評価測定システムの構築を行い、プロトタイプ素子の評価を行った。加工方法やレーザーの選定など今後、大型光学素子への広帯域反射防止膜を実現するための基礎検討としての成果を上げた。
著者
齋藤 究
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヘリウム/キセノン混合ガスにおけるシンチレーション過程を研究してきた。その中で時間スペクトル、発光スペクトルを明らかにした。また、シンチレーション収量と同時にイオン化収量も測定し、物質中での放射線エネルギーの分配過程に関する知見を得た。以上の知見を元に、ヘリウム/キセノン混合ガスを検出器媒体とし、希ガス蛍光(シンチレーション)を利用した、高許容計数率・高時間分解能といった性能を持つパルス中性子2次元位置検出器の開発を行った。
著者
井岡 邦仁
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ガンマ線バースト(以後GRB)はブラックホールの形成と関係する宇宙最大の爆発現象である。本研究では宇宙一明るいGRBがどのように光っているのか、という基本的な問いを理論的に考察した。その結果、(1)GRBが90%以上という異常に高い効率で光っていることが分かった。(2)高効率を実現するモデル(衝撃波加速効率の時間変化モデルや電子陽電子モデル)をいくつか提唱し、(3)高エネルギーガンマ線や宇宙線による検証法を提案した。(4)新たに発見された暗いGRBに対しても理論モデル(中性子星からのジェットモデル)を立て、高エネルギーニュートリノ、宇宙線の量を評価した。(5)衝撃波による粒子加速効率を測定する新しい方法(偏光を用いた方法)を提案した。
著者
浦川 順治 照沼 信浩 本田 洋介 坂上 和之 山本 樹 柏木 茂 楊 金峰 鷲尾 方一 栗木 雅夫 福田 将史 高富 俊和 Liu Shenggnuang Deshpande Abhay Potylitsyn Alexander Tishchenko Alexey A. Konoplex Ivan. V. Ghosh Subhendu
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フェムト秒パルスレーザー3倍高調波出力の高強度化(1.0mJから2.7mJへ)及び高安定化(pointing and energy stability <1.0%)を進め、光カソードからの90フェムト秒電子単バンチ及び4ミクロバンチビーム生成・加速(8MeV)後、遷移放射、スミスパーセル放射によるブロードバンド及び準単色化THz(0.3~10THz)特性測定を行った。2から4ミクロバンチ生成によるTHz超放射確認実験は、30cm-5周期小型ウィグラー磁石を使って行った。ウィグラー磁石Gap調整によりFEL共鳴放射条件を満足させた結果、Sub-THz超放射測定に成功した。THz応用実験も行った。
著者
郡 和範
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

4年間で、関連の深い論文34本、まとめの論文を1本執筆したことが最大の成果である。2013年のヒッグス粒子発見を受け、それと無矛盾な最小超対称性理論のパラメーター領域は、厳しく制限されることとなった。そのパラメーターの範囲内で、超対称性粒子がダークマタ―になる条件と、長寿命荷電粒子がビッグバン元素合成に与える悪い影響を逃れる条件を課す場合、さらにパラメーター領域は制限される。我々はsinglinoという粒子を一つ導入することにより超対称性理論を拡張すれば、そのsinglinoがダークマタ―となり、ビッグバン元素合成でのリチウム7問題とリチウム6問題を同時に解決することを示した。
著者
長谷川 雅也
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、宇宙背景放射(CMB)偏光成分の精密測定を通して原始重力波の痕跡をとらえる事を念頭に、現在世界最高レベルの感度を誇るPOLARBEAR-1実験による重力レンズ起源CMB偏光の精密探索と、POLARBEAR-1の性能を6倍に向上させた新しい検出器システム「POLARBEAR-2」の開発を目的に行った。POLARBEAR-1では、世界で初となるCMB偏光データのみを用いた重力レンズ起源の偏光Bモードの観測に成功した。またPOLARBEAR-2の開発では、世界最大級の焦点面検出器アレイの実現のために課題であった、光学系の構築と焦点面周辺の熱負荷の制御に成功し、開発をほぼ完了させている。
著者
川中 宣太
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年、PAMELAやFermiなどの観測を機に、宇宙線の電子・陽電子成分の起源とそのスペクトルの特徴を理論的に調べる研究が急速に進展している。申請者らは、もし超新星残骸において宇宙線が加速されているとすれば、その近傍に分子雲のような密度の高い領域があった場合、宇宙線陽子とガスとの相互作用によって陽電子が生成されるはずということに着目した。この陽電子が分子雲中で充分に冷却された場合、電子と対消滅する際に511keVライン光子が出ることが期待される。我々はこのライン光子の強度をFermiでガンマ線が確認されているような超新星残骸と分子雲について評価し、将来の観測で充分見える可能性があることを指摘した(Ohira et al. 2011a submitted)。このラインが見つかれば超新星残骸において陽電子がどれほど生成されているかを確実に知ることができると考えられる。また、我々は超新星残骸において加速された電子がどのように星間空間に逃走するか、その電子が作る放射スペクトルがどのような形になるかについても、加速中の放射によるエネルギー損失の影響も考慮に入れて調べた(Ohira et al. 2011b submitted)。これにより、宇宙線電子・陽電子源の有力な候補として考えられている超新星残骸から実際にどの程度電子が逃走できているかを知ることが可能になったと言える。また、超新星残骸とは別にガンマ線バースト(GRB)も宇宙線電子・陽電子の源として有力な候補とされている。このGRBが示す激しい光度変動は、相対論的なジェット中で起こる内部衝撃波で電子が非熱的な加速を受けたためと考えられているが、内部衝撃波が起こるようなジェットの非一様性の起源についてはまだ分かっていない。我々はGRBの中心エンジンとして星程度の質量のブラックホールとそれを取り巻く星程度の質量の高温降着円盤を考え、特にこれまで考えられていなかった円盤中の対流による円盤構造の変化について詳しく調べた。その結果、比較的低い質量降着率において円盤に不安定なブランチが存在することを示すことが分かった(Kawanaka & Kohri 2012)。この不安定性により円盤から駆動されるジェットの内部に非一様性が生まれたと考えられ、GRBの激しい光度変動に繋がったという仮説が成り立つ。
著者
青木 香苗 春山 富義 槙田 康博
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

高エネルギー加速器研究機構においては、多くの超伝導電磁石冷却用ヘリウム冷凍システムの開発、運転の経験がある。そこでまず機構内で超伝導電磁石とヘリウム冷凍システムの調査とトラブル例の収集を行った。その過程でどのような種類のデータを対象にするか決定された。データの種類は二つに大別される。1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ2.故障、トラブルに関する事例次に、国内外の過去、現在稼動中、そして将来計画予定のシステムの調査を行った。故障、トラブルも調査するため、各研究所の担当者と連絡を取った上で、データベース公開の原則が決定された。・「1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ」「2.故障、トラブルに関する事例」のどちらにおいても一切製造メーカー、担当メーカーの名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、研究所等の名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、データの公開は2段階とし、ユーザーが自由にアクセスできるのは、故障原因が生じた場所によって分類された簡易的な記述のみとした。さらに詳細な情報を得るためには、フォームに使用目的を書き込み申し込みを受け付けてし、目的が開発、研究、実際の運転等に限られた場合に詳細情報へのアクセスを許可するという形式を取った。この原則に基づき、日本国内、海外の研究所における対象装置を調べた。故障、トラブルという情報を提供してもらうためには、極力担当者と連絡を取り、実際に装置を見学して具体的に説明を受けるという方法を取った。また、実際に我々が直面した故障、トラブルの内、環境要因として放射線による低温システム制御系への影響の実験的な調査を行った。この結果は、開発されたデータベースのtop pageから「Useful Notes」として参照できるようにした。これらの原則と情報を元に実際のデータベースの開発を行った。データベースはKEK内で閉じられたネットワーク環境の上でテストされ、最終的にWWW上で公開された。
著者
末次 祐介
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、超音波モータに利用されている金属体表面に励起される超音波(表面波)を応用して、マイクロマシン等にも適用可能なマイクロ(極小)気体・真空ポンプを開発研究することが目的であった。当初の計画に従い、市販の超音波モータを選定・購入し、ポンプ(モータ素子)を収めるケース内に設置してその基本特性を調べた。その結果、[1]液体については、モータの回転方向(つまり表面波の進行方向)に液体が輸送されること、[2]気体(空気)については、モータ駆動中ケースに開けた小孔から気体が流出すること、が確認され、液体・気体の輸送が可能である感触が得られた。しかし、[1]市販の超音波モータでは表面波発生部が平面ではない(モータ専用のため)、[2]ポンプケースに隙間が多い(空気が漏れる)、等の問題から"ポンプ"としての性能を確認するまでには至らなかった。そこで、超音波モータ製作会社とも相談し、表面波発生部が平面である特殊なモータ素子を製作し、そのモータ素子に密着するケースも新たに製作して、再度動作確認試験を行うことにした。しかし、モータが特殊であるためその製作に時間がかかり、また、ケース設計にも多くの課題があったことから、平成21年度内には実験結果を出すことはできなかった。しかし、現在、特注モータおよびその駆動電源、新ポンプケース、そして真空ポンプとしての試験用の真空チェンバー、真空ゲージ等を購入しており、引き続き基礎実験を続ける準備は整っている。これらを使用して、今後も本マイクロポンプの開発研究を継続していく予定である。