著者
鈴木 梢 森田 達也 田中 桂子 鄭 陽 東 有佳里 五十嵐 尚子 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.731-737, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4 5

本調査は広い概念での補完代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)の使用実態や家族の体験を知り,がん患者とのコミュニケーションに活かすことを目的とし,緩和ケア病棟の遺族への自記式質問用紙調査(J-HOPE2016)の一部として実施された.調査の結果,がん患者の54%がCAMを使用し,内容はサプリメントのほか,運動やマッサージなど多岐に渡っていた.多くはがん治療や経済面に影響のない範囲でCAMを用いていたが,一部でがん治療や経済面への影響も懸念され,医療者からCAMについて話題にする姿勢が重要と考えられた.また,CAM使用との関連要因として若年患者,遺族が高学歴であることが抽出され,さらに,CAMの使用は家族の心理面に影響を及ぼしている可能性が示唆された.CAM使用歴のある患者家族の心理面・精神面にも注意を向ける必要がある.今後,CAMの内容別,緩和ケア病棟以外で死亡した患者についても調査を進めることが求められる.
著者
小田切 拓也 山内 敏宏 白土 明美 今井 堅吾 鄭 陽 森田 達也 井上 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.121-124, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
10

セフトリアキソンは, 1日1回の点滴でよく, 腎不全でも使用可能なため, 皮下点滴が可能ならば終末期がん患者に用いやすい. 2013年1月から2014年1月に聖隷三方原病院ホスピス病棟を退院し, セフトリアキソン皮下点滴を使用した患者を, 後ろ向きに抽出した. 主要評価項目は抗菌薬の奏功率(3日以内の症候の改善)で, 二次的評価項目は刺入部の炎症反応と, 他の抗菌薬の奏功率との比較である. 患者から包括的同意を得た. セフトリアキソン皮下点滴を用いたのは10人(尿路4人, 肺4人, 軟部組織2人), 奏功率は0.70 (95%信頼区間0.39~0.89)だった. 全員, 刺入部位に炎症反応を認めなかった. 他の抗菌薬使用者は16人19回, 奏功率は0.74 (同0.51~0.88)で, 両群の効果はおおむね等しかった. セフトリアキソンの皮下点滴は, 血管確保が困難な終末期がん患者の感染症治療において有用である.
著者
小田切 拓也 森田 達也 山内 敏宏 今井 堅吾 鄭 陽 井上 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.273-279, 2013 (Released:2013-10-22)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

【目的】終末期がん患者において, 短期間・低侵襲で感染症と腫瘍熱を鑑別する方法を開発することは, 症状緩和において有用である. 【方法】2009年4月から2011年8月の聖隷三方原病院ホスピス入院患者において, 腫瘍熱群と感染症群を後ろ向きに12人ずつ同定した. 両群の背景因子, 採血所見, 身体所見, 症状をカルテより抽出し, 比較した. 【結果】以下の項目で有意差を認めた. 平熱時と発熱時のC-reactive protein値の差(p<0.001), 平熱時と発熱時の白血球数の差(p=0.0017), 好中球率(p=0.023), リンパ球率(p=0.011), せん妄(p=0.012). 【結論】一般的採血項目とその時系列変化により, 腫瘍熱と感染症を鑑別できる可能性が示唆された.
著者
亀井 千那 伊藤 慶 早川 沙羅 鄭 陽 鈴木 梢 東 有佳里 田中 桂子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-17, 2021 (Released:2021-01-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1

肝腫瘍に対する緩和照射はその有用性を示唆する研究が散見されるものの,本邦では症例報告すら乏しい状況である.本研究の目的は,肝腫瘍由来の疼痛に対する緩和照射の効果を明らかにすることである.2014年12月から2016年11月の間に都立駒込病院で,原発性もしくは転移性肝腫瘍が原因と考えられる疼痛に対して肝臓への緩和照射を行った症例を後方視的に検討した.計15症例が8Gy1分割の緩和照射を受けており,照射前後で疼痛のNumeric Rating Scale(NRS)を評価していた12例全例で低下を認めた.Grade 3以上の急性期有害事象はみられなかった.肝腫瘍由来の疼痛に対する緩和照射は,症状の緩和に有効で忍容性もある可能性が示唆された.