- 著者
-
酒井 隆全
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.64-73, 2020-10-25 (Released:2020-11-30)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
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自発報告は市販後の医薬品安全性監視において重要な情報源である.日本では 2012 年に Japanese Adverse Drug Event Report database (JADER) が公開されており,以来,データマイニング手法を用いた数多くの学会発表,論文投稿が行われている.自発報告は,一般的に過少報告,分母情報の欠如,報告バイアスの影響など種々の限界点を有しており,これらは JADER にも当てはまる.また,JADER では主に重篤な症例が集積されていることや,依頼に基づく報告も含まれていることなど,自発報告が収集されている制度的背景も影響をもたらす.統計学的に検出されたシグナルは必ずしも医薬品と有害事象に因果関係があることを意味するものではなく,検出されたシグナルには慎重な解釈が必要となる.しかしながら,留意すべき限界点について考えずに用いられているという指摘の声があがっている.企業の医薬品安全性監視活動におけるシグナルの取扱いについては,EU における Guideline on Good Pharmacovigilance Practices (GVP) Module Ⅸ,米国における Guidance for Industry - Good Pharmacovigilance Practices and Pharmacoepidemiologic Assessment などが参考となる資料として存在している.一方,研究者が自発報告データベースを利用して得られた科学的知見を報告する際に向けたガイダンスなどはほとんど整備されていない.そこで,我々は主に JADER を用いて研究発表を行う研究者の視点から,一般社団法人 日本医薬品情報学会 平成29年度課題研究班において「JADER を用いたデータマイニング (主に不均衡分析によるシグナル検出) の研究発表の際に留意すべきチェックリスト」を作成した.本稿では,このチェックリストの項目について,チェックリスト作成にあたり参考とした “CIOMS Working Group Ⅷ報告 ファーマコビジランスにおけるシグナル検出の実践” を参照しつつ概説する.