著者
井上 智貴 酒向 正春 石原 健
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.188-196, 2009 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

【目的】回復期リハビリテーション期に脳卒中を再発し急性期病院へ転院となった症例の特徴を検討する.【対象と方法】対象は2004∼2006年に当院で入院治療した脳卒中1,538例(脳梗塞917例,脳出血621例)で,脳卒中を再発し急性期転院となった20例である.原疾患に基づき分類し,再発病型,治療,病態,発症からの期間,性別を検討した.【結果】再発20例は男性8名,女性12名,平均年齢70.6±14.1歳,平均在院日数49.2±35.3日(4∼111)であった.脳梗塞17例の再発は脳梗塞14例,脳出血3例であり,心原性脳塞栓症11例の再発は9例が塞栓症(PT-INR<1.6:4例;ワーファリン未使用:4例PT-INR1.77:1例),2例が脳出血(抗血小板剤使用:PT-INR1.78±0.45)であった.アテローム血栓性脳梗塞5例の再発は4例がアテローム血栓性脳梗塞であり,1例が高血圧性脳出血であった.ラクナ梗塞1例の再発は高血圧性脳出血であった.一方,脳出血3例の再発は2例が高血圧性脳出血であり,1例がアミロイドアンギオパチィーであった.【考察】回復期リハビリテーション期における脳梗塞と脳出血の再発率はそれぞれ1.7%と0.5%であった.心原性脳塞栓症再発例はPT-INR管理不良が主であり,回復期入院直後に再発する症例もあり,正確な病型診断の上で早期にPT-INR 1.6∼2.6での管理が必要である.一方,脳梗塞からの脳出血再発は抗血小板剤併用に限られ,血圧管理に注意を要する.アテローム血栓性脳梗塞の再発は外科的治療適応症例であり,回復期前の早期外科的治療の必要性が示唆される.脳梗塞からの脳出血例,および脳出血再発例ともに通常の収縮期血圧は130 mmHg以下で,週1回140 mmHgを超える程度であり,脳出血の再発予防には厳密な血圧管理が必要である.
著者
倉田 二郎 尾崎 眞 三橋 紀夫 赤嶋 夕子 酒向 正春
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々は、麻酔薬が痛みや意識を減弱・消失させる過程を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてヒトモデルで解明しようと試みた。その第一段階として、電気刺激による痛み感覚が脳に発現する様子をとらえ、それが実際の痛み感覚とどのように関連するかを調べた。2000、250、または5Hzの正弦波電気刺激により末梢神経のAβ、Aδ、またはC線維を選択的に刺激する装置(Neurometer)を用いて13人の健康被験者の左前腕腹側に痛み刺激を与えた。その結果、250Hzおよび5Hz刺激は、2000Hz刺激に比べ1/4以下の電流で、より鋭く不快な痛み感覚を引き起こした。次に、痛みスコア(VAS)が5または7を示す強さの電流を用いて痛み刺激を同様に与えながら、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により疼痛関連脳活動を観察した。電流による画像artifactを最小限に抑えるため、最小電流値で痛みを起こす5Hz波を選択した。3人の被験者でブロックパラダイムによる全脳fMRI実験を、もう1人の被験者でさらに静脈麻酔薬propofolを鎮静および催眠濃度で与えて同じ実験を行った。Propofolは、Graseby社製TCI機能付きシリンジポンプにて投与した。MRIスキャナーはSiemens社製Vision(1.5テスラ)を用いた。ソフトウェアBrain voyager Qxを用いてgeneral linear modelによる画像解析を行った。その結果、VAS=3の痛みにより右第二次感覚野、右前頭皮質、右下頭頂小葉が活性化し、さらにVAS=5の痛みにより両側前頭皮質、両側下頭頂小葉、両側補足運動野が活性化した。一方、propofolを投与した実験では、多重比較を含む厳密な検定を行ったところ、background noiseが極めて高く、ノイズ振幅が信号強度の2.8%を占めた。輸液路・シリンジポンプなどいくつかの原因が考えられるが、ノイズ源を除去し、今後更に実験精度を高める予定である。