著者
井上 薫 重田 善之 梅村 隆志 西浦 博 広瀬 明彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.56-64, 2021-04-25 (Released:2021-04-22)
参考文献数
19

本研究では,5種の毒性試験事例から得たさまざまな病理組織学的所見の発生頻度データに実際にベンチマークドーズ(BMD)法を適用し,本法を発生頻度データに適用する際の留意点をまとめた.事例検討の結果,重要な所見について,毒性学的意義や用量相関性等が担保できれば,病変の程度毎に発生頻度データがある場合はある程度以上の発生頻度に対して,あるいは重症度が高い続発性病変ではなく,より毒性学的意義があると判断された前段階の病変の発生頻度データに対して,BMD法を適用することは妥当であることが確認された.また,BMD法を適用する必要性が高く,入手した個別所見の発生頻度データでは毒性学的にも統計学的にも妥当な計算結果を得られない場合は,可能であれば個体別の病理組織学的検査データまで遡り,新たに求めた総括的な所見名(診断名)に対する発生頻度データに基づきBMD法適用を試みることを提言した.BMD法適用の際は,必ず毒性病理学,毒性学,統計学の専門家が本法適用の対象となる所見やその発生頻度と計算結果を分析し,可能な限り統計学的にも毒性学的にも妥当な適用となるよう議論する必要がある.