- 著者
-
野中 博史
- 出版者
- 宮崎公立大学
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.265-286, 2008-03-07
メディアのニュースに接して人々は、その内容をどのように受容していくか。ニュースの効果研究に関する先行研究では、20世紀に入ってから様々な例が報告されているが、近年はとくにその効果の大きさが指摘されている。メディアが多様化しているにも係らず、情報や主張、イメージ、映像が画一化し、人々に対するニュース効果は強力になっているとする見方が強い。一方で、過剰な情報や主張、イメージを消化しきれない人間が増え、貧しい判断力や想像力しか持てない"象徴的貧困"状態を招いているとの考察もある。こうした状態で、人々は一般人の常識と合理的推論で判断して「根拠のない不合理な情報」に対してどのように受容するのか。懐疑心を持たずにニュースを受容すれば、人は容易に情報に操作されることになる。逆に言えば、メディアを利用した情報操作が容易になる。本研究では実際の新聞記事を用いて1.人は根拠のない不合理な情報を容易に受容する2.人は根拠のない不合理な情報に魅かれ易い3.人には願望や恐怖心があり、そうした心性が強いほど、それを満足させる不合理な情報も受容しやすい4.人は根拠のある合理的情報に接すると、不合理な判断を修正することが多い-などの知見を得た。合理的推論思考や冷静な思慮を欠如させたニュースの受容性の特徴は、真実を追究しようとする視点の衰退につながり、適正な判断力の育成を阻害する。従って、教育の現場で新聞を活用するNIE(Newspaper in Education)においては、ニュースの受容性の特徴を認識した上で、教員が合理的な推論思考と知識を持ち、児童、生徒の適切な判断力の育成に努めることが大切である。