著者
野島 順三 市原 清志
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全身性エリテマトーデス(SLE)患者における動脈血栓塞栓症発症機序の解明を目的に、抗リン脂質抗体が末梢血単核球による組織因子(TF)発現や炎症性サイトカイン産生にどのような影響を及ぼすのか検討した。その結果、抗リン脂質抗体が単球とリンパ球の相互作用によるTF発現やTNF-α、IL-1β、IL-6の産生を増幅させることを確認し、これがSLE患者における動脈血栓塞栓症の重要な病因となることを明らかにした。
著者
三島 千穂 金重 里沙 長谷川 真梨 清水 直人 本木 由香里 野島 順三
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.9-14, 2021-01-25 (Released:2021-01-26)
参考文献数
11

慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome; CFS)は,これまで健康に生活していた人が,ある日突然,関節痛・筋肉痛・発熱を伴う極度の疲労状態に陥り,半年以上も健常な社会生活が送れなくなる原因不明の難病である。従来の臨床検査では,特異的な異常や病因を確定できず,治療法も確立されていない。本研究では,臨床徴候により診断が確定した慢性疲労患者28症例と一般人27名を対象に,相対的酸化ストレス度(oxidative stress index; OSI)評価および単核球細胞表面抗原解析を実施し,CFS患者の鑑別診断に有用なバイオマーカーを探索した。その結果,OSIは一般人に比較して慢性疲労患者で有意に上昇していた。一方,リンパ球分画解析では,一般人と比較して慢性疲労患者ではB細胞の有意な増加,NK細胞の減少傾向が認められた。また,単球の表面抗原解析において一般人と比較して慢性疲労患者ではCD14+/CD16−単球の割合が有意に減少し,CD14+/CD16+単球の割合が有意に増加していた。さらに,慢性疲労患者におけるB細胞およびCD14+/CD16+単球の増加は,OSIの上昇と関連していた。これらの結果から,酸化ストレス亢進によって引き起こされる慢性炎症がCFSの病態形成に関与している可能性が示唆された。