著者
宮島 たか子 山本 俊雄 間瀬 啓介 飯塚 哲也 野崎 稔 木内 信
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.37-42, 2001-04-27
被引用文献数
2

絹の新素材開発を目的に,イミダゾール系化合物のトリフルムゾールを投与して細繊度蚕品種の「はくぎん」及び「ほのぼの」の3眠化試験を行った。乾物重で140ppmのトリフルミゾールを添加した人工飼料を起蚕から3日間与えた場合の3眠化率は3齢ならびに4齢投与とも「はくぎん」は80%を越えたが,「ほのぼの」では30%以下と低かった。280ppm濃度になると両品種とも100%近い3眠化率を示すようになった。この「ほのぼの」の感受性が低いのは交雑親である日513号に由来することが分かった。3眠化率は4齢投与より3齢投与の方が高く,全齢経過日数は3齢投与より4齢投与の方が短くなった。3眠化蚕の繭糸質についてみると無投与区に比して繭層重の低下割合が最も高く,以下,繭重,繊度,繭糸長,繭層歩合,繭長,繭幅の順になり,繭幅より繭長の低下割合が高いので,繭形が丸みを帯びるようになった。繊度は3齢投与で「はくぎん」1.36d,「ほのぼの」1.72d,4齢投与で「はくぎん」0.99d,「ほのぼの」1.03d,と著しく細くなった。これらの3眠化蚕の産生する繭は繊度偏差も小さいので,極細の高級生糸による差別化製品の開発や医療・工業用への用途が期待される。
著者
吉野 佳一 土屋 雅宏 野崎 稔 入江 宏
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.501-507, 1987

甲状腺機能亢進症において錐体路徴候が出現するという事実は運動ニューロン障害という観点から示唆に富む現象である。しかし文献上の報告はむしろ稀であり,従来あまり注目されず,その機序も解明されていない。一方,運動ニューロンの変性をきたす筋萎縮性側索硬化症では葉酸代謝に異常が生しているが,過剰の甲状腺ホルモンは葉酸代謝に変動をもたらすことが指摘されている。錐体路徴候を呈した甲状腺機能亢進症では機能先進自体には特異な点はなくしまた錐体路徴候の発現頻度が低いことから,両者は直接的な因果関係にはなく,何らかの介在因子の存在が推定される。甲状腺ホルモンおよび葉酸代謝の異常が運動ニューロンの変性機序に関わっている可能性について,今後検討がなされる必要がある。