著者
林 進 伊藤 栄一 岡田 正樹 塚本 睦 中川 一 野平 照雄 山口 清 横井 秀一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.9-26, 1992-12-25
被引用文献数
1

国指定天然記念物「臥龍桜」は,岐阜県宮村にある推定樹齢一千年の,淡墨桜に次ぐ県下第二位の老大樹である。その姿には,一千年という時間の厳しさ,またそれを生き技いてきた樹自身の生命力の強さが表されている。しかし,近年腐朽が進み樹勢維特上不安が持たれている。このため早急に何らかの対策を講じなければならない。樹木保護に当たっては総合的な対策が必要であるが,現在そのための調査方法や,対策技術が未確立な状況にある。そこでそれらの確立に向けて基礎調査研究を行った。調査は,現状を把握するため,桜本体の形状,腐朽部,成長状況,葉・花・根の様子,病虫害について行った。調査の結果から,臥龍桜の樹勢は旺盛である点,しかし,腐朽が強度に進行している部分もありそれらに対しての防腐対策,さらには,樹形保存のための外科手術など,多くの保護対策を講じる必要がある点などが考えられる。これらの保護対策は,それぞれ個別の対策ではなく,総合的に実施されること必要である。そのため,臥龍桜の保護管理サポートシステムを確立すること,モニタリングを長く継続して行うことが必要となる。以上のことから体系的樹木医学の確立へのステップとなり得る研究として報告する。