著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-77, 2001-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
15

イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 結果枝内の第7節以下のすべての果実を横径が約4mmに達した結果期に摘果して, 第8節と第13節の果実の形質と糖集積に及ぼす影響を調査した.1. 第8節と第13節の果実が結果から成熟までに要した日数は73∿74日で, 摘果区と無処理区との間に差はなかった.結果後の果実肥大において, 第8節の果実では摘果処理の影響が小さかったが, 第13節では果径が肥大初期から大きくなる傾向が認められた.2. 無処理区の収穫果実は, 第8節と第13節の果実は第3節の果実に比べ横径と果実重が著しく小さく, 肥大が劣った.第8節, 第13節の果実は, 第3節に比べて果皮色のE値が高く着色が劣り, 小果, 果托の糖度も低かった.果実の硬度は, 節位間に差がみられなかった.3. 摘果区では, 第13節の収穫果実の横径と果実重が無処理区より大きくなり, 果肉内では小果よりも果托の重量が増加した.果皮色のE値は, 第8節では摘果区が無処理区より低くなって着色が優れ, 第13節でも摘果区が低下傾向となった.果実の硬度は, 第8節, 第13節の両節位とも処理区間に差がなかった.4. 摘果区では, 第8節, 第13節の小果および果托で無処理区に比べ単位重量当たりの果糖, ブドウ糖含量が増加した.また, 部位ごとの重量から換算した糖の総量も無処理区より多くなり, 特に, 重量増加が顕著であった第13節の果托で糖の集積が促進された.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.987-992, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

イチジク果実の糖含量と糖組成比について, 秋果および夏果の品種間差異, 果実の部位, 結果節位による相違を検討し, 以下の結果を得た.1. 供試した普通型10品種の秋果と, サンペドロ型3品種および普通型1品種の夏果のすべてで, 小果の全糖含量に占める果糖, ブドウ糖の合計値の割合が90∿95%以上に達し, ショ糖の割合は低かった.しかし, 糖組成比の品種間差異はショ糖で顕著に認められた.2. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 成熟期に小果, 果托の果糖, ブドウ糖含量が急増するとともに, 全糖含量に占めるブドウ糖の割合が低下して果糖の割合が高まった.収穫期における糖組成比は, 両品種とも小果, 果托の間に有意な差がなかった.3. 小果, 果托の重量は, 収穫前の約2週間で急激に増加し, その際, '桝井ドーフィン'は果托, '蓬莱柿'は小果の重量が大きくなった.小果, 果托の重量から換算した部位別の糖含量は成熟期に急増し, とくに小果の重量が大きくなった'蓬莱柿'では, 小果の各組成糖の含量が果托に比べて顕著に多くなった.4. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 結果節位が高い果実で, 小果の全糖に占めるショ糖の割合が高くなった.結果節位の上昇に伴う糖組成比の変化には, 秋季の気温低下が影響していると考えられた.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.202-207, 2000-03-15
被引用文献数
2 5

結果節位の異なるイチジク'蓬莱柿'秋果の発育および形質の変動と発育期間中における気温の影響について, 1996年から1998年までの3カ年にわたって検討を行った.1. 第3節, 第8節および第13節の秋果の結果日から収穫日までに要した日数は80∿89日で, 果実の発育期間中の積算温度(基準温度0℃)は年次, 節位にかかわらず, ほぼ2, 100℃前後であった.横径, 縦径および果実重は第3節の果実が顕著に大きく, 節位の上昇とともに果実が小さくなる傾向が認められた.果皮色のE値は, 節位の高い果実ほど低下して着色が優れた.小果の可溶性固形物含量には, 節位間に一定の傾向が認められなかった.2. 結果後の気温は第3節と第13節で対称的な変化を示し, 第3節では結果初期の気温が低く, その後は収穫期まで上昇したのに対して, 第13節では結果初期の気温が高く, その後は収穫期まで低下した.第8節は, 第3節と第13節の中間的な気温変化を示した.果実の発育期間中の気温は各節位ともおおむね最低気温15℃以上の範囲で推移したが, 果実が未成熟であった1996年の第13節では, 結果後76日以降の最低気温が13℃に低下した.3. 果実の横径, 縦径, 果実重は, 結果後30日までの気温との間に有意な負の相関が認められた.また, 横径, 縦径, 果実重は収穫前5∿15日間の平均気温, 最低気温との間に有意な正の相関が認められ, とくに収穫前5日間の最低気温との相関が高かった.果皮色のE値も, 収穫前15日までの平均気温, 最低気温との間に有意な正の相関が認められた.小果の可溶性固形物含量は, 果実発育期間中の各時期とも気温との間に有意な相関が認められなかった.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-77, 2001
参考文献数
14

イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 結果枝内の第7節以下のすべての果実を横径が約4mmに達した結果期に摘果して, 第8節と第13節の果実の形質と糖集積に及ぼす影響を調査した.1. 第8節と第13節の果実が結果から成熟までに要した日数は73∿74日で, 摘果区と無処理区との間に差はなかった.結果後の果実肥大において, 第8節の果実では摘果処理の影響が小さかったが, 第13節では果径が肥大初期から大きくなる傾向が認められた.2. 無処理区の収穫果実は, 第8節と第13節の果実は第3節の果実に比べ横径と果実重が著しく小さく, 肥大が劣った.第8節, 第13節の果実は, 第3節に比べて果皮色のE値が高く着色が劣り, 小果, 果托の糖度も低かった.果実の硬度は, 節位間に差がみられなかった.3. 摘果区では, 第13節の収穫果実の横径と果実重が無処理区より大きくなり, 果肉内では小果よりも果托の重量が増加した.果皮色のE値は, 第8節では摘果区が無処理区より低くなって着色が優れ, 第13節でも摘果区が低下傾向となった.果実の硬度は, 第8節, 第13節の両節位とも処理区間に差がなかった.4. 摘果区では, 第8節, 第13節の小果および果托で無処理区に比べ単位重量当たりの果糖, ブドウ糖含量が増加した.また, 部位ごとの重量から換算した糖の総量も無処理区より多くなり, 特に, 重量増加が顕著であった第13節の果托で糖の集積が促進された.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.987-992, 1999-09-15
被引用文献数
3 6

イチジク果実の糖含量と糖組成比について, 秋果および夏果の品種間差異, 果実の部位, 結果節位による相違を検討し, 以下の結果を得た.1. 供試した普通型10品種の秋果と, サンペドロ型3品種および普通型1品種の夏果のすべてで, 小果の全糖含量に占める果糖, ブドウ糖の合計値の割合が90∿95%以上に達し, ショ糖の割合は低かった.しかし, 糖組成比の品種間差異はショ糖で顕著に認められた.2. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 成熟期に小果, 果托の果糖, ブドウ糖含量が急増するとともに, 全糖含量に占めるブドウ糖の割合が低下して果糖の割合が高まった.収穫期における糖組成比は, 両品種とも小果, 果托の間に有意な差がなかった.3. 小果, 果托の重量は, 収穫前の約2週間で急激に増加し, その際, '桝井ドーフィン'は果托, '蓬莱柿'は小果の重量が大きくなった.小果, 果托の重量から換算した部位別の糖含量は成熟期に急増し, とくに小果の重量が大きくなった'蓬莱柿'では, 小果の各組成糖の含量が果托に比べて顕著に多くなった.4. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 結果節位が高い果実で, 小果の全糖に占めるショ糖の割合が高くなった.結果節位の上昇に伴う糖組成比の変化には, 秋季の気温低下が影響していると考えられた.