著者
石井 仁平 田中 信孝 糟谷 美有紀 野村 幸博 永井 元樹 脊山 泰治
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.169-174, 2005-04-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12

外傷性大量気道内出血に対し,一般的なシングルルーメン気管チューブを用いて健側主気管支に挿管(片肺挿管)し,救命に成功した症例を経験したので報告する。症例は16歳の男性,バイク事故により受傷し当院に救急搬送された。来院時,左側気道からと考えられる大量気道内出血を呈していた。われわれは,シングルルーメン気管チューブを意図的に健側である右主気管支に挿管した。右主気管支内でカフを膨らませることによって,患側左主気管支から溢れた血液が右肺へ流入するのを阻止し,症例は血液ガス分析および胸部X線写真上の劇的な改善を示した。片肺挿管下でも肺内シャントによる低酸素血症は来さず,他の止血操作を待たずに止血を得た。これには低酸素性肺血管収縮が関与していると考えられる。また片肺挿管下では,患側気管支は気管壁と気管チューブの間隙を通じて咽喉頭に開放されているため,片肺挿管後いったんは患側肺に充満した血液は,翌日気管チューブのカフを気管に移す前におおむね消失し,凝血塊による無気肺やその他の合併症は生じなかった。大量気道内出血症例の救命は難しく,ダブルルーメンチューブその他の特殊な道具を用いた方法が知られているが,依然として致命率が高い。われわれは,通常の気管挿管に使用される一般的なシングルルーメンチューブを用いた片肺挿管法は,迅速・簡便かつ有効な方法であると考える。
著者
小池 大助 永井 元樹 福元 健人 野村 幸博 田中 信孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.3160-3163, 2013
被引用文献数
1

胆嚢結石症は妊婦に合併する消化器外科疾患において急性虫垂炎に次いで多いとされる.症例は27歳女性.糖尿病合併妊娠にて当院産科通院中であった.妊娠21週0日胆石発作のため当院救急外来受診となった.その後も数日おきに発作が頻発したため入院加療とした.食事で発作が誘発されるため経口摂取再開困難であった.中心静脈栄養による長期管理は子宮内胎児発育遅延のリスクがあるため,妊娠24週3日に手術施行した.臍からopen法により1stトロッカーを留置することで安全に気腹し,胆嚢摘出術を施行することができた.術中の気腹圧は8-10mmHgとして管理した.術後は良好に経過し妊娠40週0日2,824gの男児を経膣出産した.妊娠中期は比較的安全な手術が可能であるとされる.妊娠中の胆嚢結石症では症状の再燃率が高率であり,手術を第一選択とすることで胎児と妊婦に対するリスクを最小限にできる可能性がある.