著者
野澤 一博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.352-373, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
57
被引用文献数
1

イングランドでは,2011年の地域産業パートナーシップの組成以降,都市協定,成長協定,権限移譲協定,合同行政機構の組成,公選制市長などと立て続けに政策が展開されている.本稿では,地域産業パートナーシップ設立以降のイングランドにおける権限移譲政策の展開を明らかにし,地域がどのように国の政策を受容し,どのように変容していったかについて明らかにすることを目的とする.事例として取り上げた北東イングランドでは,ノース・オブ・タイン,北東,ティーズバレーの三つの合同行政機構が形成された.合同行政機構は,新市場主義において都市地域の集積効果を利用した経済開発のために生み出された新しいガバナンスであり,その管轄領域は,政府との協定により権限が積み重なられることにより正当化されている.
著者
野澤 一博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.24-49, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
21

地域経済活性化のために,新たな技術を導入するなどして,競争力を失った地域産業の再生を図る取組みが各地で行われている.北陸地方では繊維産業の競争力強化のために,県が中心となり国の助成事業を活用し,炭素繊維複合材の開発を積極的に行っている.本稿では,北陸地域で展開されている炭素繊維複合材開発の状況と政策展開を明らかにし,産地企業の新技術を用いた実用化の取組みについて分析する.炭素繊維複合材に関して,石川県では大学を中心に研究開発が行われており,企業間のつながりもあり実用化の動きに広がりが見られた.一方,福井県ではコア技術をもとに公設試が中心となり,実用化の展開が図られていた.炭素繊維複合材の開発は,従来産業である繊維産業産地の高度化というより,将来,航空機や自動車部品という全く違った産業のサプライチェーンの一部となる可能性がある.
著者
野澤 一博
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2014-08 (Released:2014-08-14)

本報告書では、全国の高等教育機関(大学、短期大学、高等専門学校)の社会・地域貢献活動に関する組織や、行政との関係、専門人材育成活動、コンサルティング活動などの現状と課題を明らかにした。多くの高等教育機関が社会・地域貢献活動に取り組んでおり、理工学部を含む総合大学が多い国立大学で特に幅広い活動がみられた。体制・運営管理については、各校において比較的整備が進んでいた。教員への活動に対するインセンティブの付与では、国公立大学においては比較的措置が取られているが、私立大学や短期大学ではインセンティブが付与されていない学校が多かった。社会・地域貢献活動に関する課題としては、国立大学では活動が比較的活発であったが、運営実態面では、資金や人員に関して課題とする学校も多く、今後、社会・地域貢献活動を行なうためには人的・予算的なリソースの確保が重要なテーマと言える。社会・地域貢献活動は、学校種別や規模により活動内容に多様性がみられた。社会・地域貢献は、統一的な基準を設けて標準化を図るより、学校の組織特性や地域環境・ニーズに合わせた多様な取組を支援していくことにより、その取組がより活性化すると考えられる。 This study investigates the current status and characteristics of social and regional engagement, including management aspects, relationship with government, continuing professional development and consulting services, of higher education institutions (universities and colleges) in Japan. With regards to social and regional engagement, many institutions have provided a variety of program. Especially national universities, which are often classified as comprehensive universities including sience and technology departments, have a wide range of programs in places that facilitate social and regional engagement. Many of higher education institutions have developed the organizational structure and operational management. While many national and public universities have set up incentivizing measures to encourage professors to engage with the society, many of private universities and junior colleges have yet to develop incentivizing measures. Although many national universities actively have engaged with their society, the procurement of the necessary human resource and financial capital to conduct programs is a critical challenge in the future.There were a wide variety of social and regional engagement programs run by different institutions that differ depending on institution classification, specialization, and size. Instead of standardizing these programs by applying a unified set of rules and guidelines, instituting a diverse system that reflects the unique organizational characteristics of the institution and needs of surrounding society would be more effective in developing social and regional engagement programs. By allowing institutions to devise a system that fits their schools and region, higher education institutions can facilitate more dynamic and active programs for their society and region.
著者
野澤 一博
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_1-1_8, 2016 (Released:2018-02-10)
参考文献数
10

大学は,地域の多様な課題に対して,地域と連携してソリューションを提供する場となることが求められている.しかし,大学の地域連携に関しては,現況が十分に把握されておらず,また,議論も十分に重ねられてきたわけではなかった. そこで本稿は,アンケート調査結果を中心に大学の地域連携の取組状況を明らかにし,大学の地域連携の活動現況と課題を抽出した.大学等が挙げる地域連携活動の課題としては,教職員や資金の不足との指摘が多かった.今後,更に地域連携活動を展開するためには,人的・予算的なリソースの確保が重要な課題となるであろう.同時に,大学の地域連携活動は,地域連携の取組を単体として捉えるのではなく,研究・教育につながるシステムとして捉え,大学の組織特性や地域環境・ニーズに合わせ支援していくことが必要である.