著者
野澤 祥子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.1-15, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
60
被引用文献数
4

本稿では,2017年7月から2018年6月末までの1年間に『教育心理学研究』,『発達心理学研究』,『心理学研究』,Japanese Psychological Researchに掲載された論文,ならびに『日本教育心理学会第60回総会発表論文集』に掲載された論文のうち,乳幼児期と児童期を対象とした発達研究について整理・概観を行った。これらの研究を,研究の対象とする社会的文脈に着目し,「家庭の文脈に関わる研究」,「園・学校の文脈に関わる研究」,「『非定型』的文脈に関わる研究」,「子どもの発達に焦点化した研究」に分類した上で,そのそれぞれについて,研究の整理を行った。最後に,以上の整理に基づき,今後,取り組むべき研究の課題を提示した。
著者
野澤 祥子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.22-32, 2011-03-20 (Released:2017-07-27)

1〜2歳の仲間同士における自己主張の発達的変化を明らかにすることを目的とし,保育所の1歳児クラスを対象として約1年間の縦断的な観察を行った。分祈には,誕生月を説明変数とした潜在曲線モデルを用い,発声や発話の声の情動的トーンにも焦点を当てて検討を行った。その結果,多くのカテゴリにおいて,その初期量や変化率が誕生月の違いによって異なること,すなわち,観察開始時の月齢によってその後に辿る発達的変化のパターンが多岐に亘ることが示唆された。次に,この結果に基づきつつ,個々の子どもの発達的軌跡を参照し,その共通性から発達的傾向を検討した。その結果,自己主張がなされる場合,1歳前半には発声による主張が特徴的にみられること,2歳前後にかけて不快情動の表出を示す行動が増加し,その後は減少すること,2歳後半にかけて情動や行動を制御した発話や交渉的表現など,よりスキルフルな自己主張が増加することが示唆された。自己主張の発達を検討する際に,声のトーンを含む情動的側面に着目することや,個々の子どもの発達的変化を考慮することの重要性が考察された。