著者
二宮 隆次 小野 浩幸 高橋 幸司 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.93-104, 2016 (Released:2016-07-07)

本研究では、産学官連携の現場の諸活動について、大量の質的(定性的)データを基に計量的分析を実施し、可視化した情報として提供することを試みた。具体的には、日経産業新聞の連載記事「ベンチャー仕掛け人」を、テキストマイニング手法「KH Coder」を用いて分析した。その結果、①大学の共同研究センター等を中心とした産学官連携活動、②インキュベート施設を中核とした活動、③資金に関するベンチャーキャピタルや金融機関を中心とした活動、のそれぞれの活動において、出現する言葉に特徴があることが明らかになった。また、特徴的な3つのグループにプロットされた語から特定語を選択して共起分析した結果、①の「産学」による分析では、研究、開発、技術および連携の4つ語が強く共起関係を結び、加えてそれぞれの語がほかの関連語とネットワークを結び、産学官連携の活動パターンを形成していることが確認できた。②の「施設」と「入居」による分析では、主たる活動は起業、事業を育成することであることが見て取れた。施設と入居の語の共起分析から、施設には入居タイプと入居がないものがあり、入居は技術、経営の語の共起関係が比較的高く、施設は、地域、開発および相談が高いことがわかった。③の「上場」と「ファンド」による分析では、起業・研究フェーズでの事業の元手となる出資やベンチャーキャピタル、実用化・会社設立フェーズでのファンド・株式、事業経営の維持・拡大フェーズでの銀行等金融機関の融資などが共起していることが確認された。以上のことから、本研究は、産学連携活動を効率的、かつ、効果的に実施するうえで重要な情報を提供しうるものと考えられる。
著者
野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-28, 2022 (Released:2022-06-28)

日本酒の味を糖度(Brix値)計と酸度計、味覚センサーを用いて調べた。試料として、100点の国産日本酒を用いた。味覚値は味覚センサーを用いて、酸味、塩味、旨味、苦味雑味および渋味刺激の5先味と旨味コク、苦味および渋味の3後味を測定した。それぞれの味データを解析した結果、日本酒の味の指標として、Brix値(甘辛)、酸味値(辛さ)および旨味コク値(旨味)が適していると考えられた。この3つの指標を用いたクラスター分析により8つのクラスターに分類された。8つのクラスターをそれぞれの数値を基に、Brix値による甘辛の定義から、クラスター2と3は甘口、これ以外は辛口と判定した。また、濃淡は、酸味値を+4から–2(酸味が強いとプラス)、旨味コク値を+3から–1(旨味が強いとマイナス)で総合評価した。酸度と日本酒度による味分類を基に、辛口でプラスの場合は淡麗辛口、マイナスの場合は濃淳辛口と分類した。甘口でプラスの場合は濃淳甘口、マイナスの場合は淡麗甘口と分類した。その結果、酸度と日本酒度による分類に比べ、濃淳辛口への極端な集中はみられなかった。以上のことから、味の指標として、Brix値、酸味値および旨味コク値を用いることにより、日本酒の味を概ね4つの味に分類でき、酸度と日本酒度による分類より味の違いを見分けられる可能性が示唆された。
著者
金平 隆史 野長瀬 裕二 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-24, 2017

本研究では、これまでほとんど研究されて来なかった二次下請け、一次下請けおよびセットメーカーの三者間の産業財マーケティングについて、二次下請け企業が両顧客の購買行動を把握しタイムリーな情報活動を行う手法を、事例研究により検討した。購買行動モデルとして、 Shethモデルを三者間関係に拡張したものとそれと関連する情報活動モデルを提案し、X社の一般照明事業を例に購買行動を分析した。その結果、両顧客での採用に向けて、一次下請けの期待形成フェーズ突破が重要なステップである事が判った。また、一次下請けの電気と光学の両技術知識を持つ担当エンジニアの存在は、一次下請け社内の調整力、セットメーカーとの調整力、の両面で二次下請けに有益である可能性を示唆した。さらに、提案や情報提供によりコンフリクト解消した8案件の存在は、コンフリクト解消フェーズにおける情報活動の重要性を示唆した。
著者
二宮 隆次 小野 浩幸 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.125-130, 2017 (Released:2018-01-06)

2002年から2010年までの8年6か月間に発刊された新聞記事から、年代別の産学連携活動の内容を読み取るために、分析対象記事に発刊年度の見出しを付して出現パターンの似通った語を探索し、さらに対応分析を行い活動の特徴についてテキストマイニング手法を用い分析した。その結果、①2002年度から2004年度のグループ(黎明期)、②2005年度から2007年度グループ(発展期)、③2008年度から2010年度のグループ(停滞期)の3グループに分類されることがわかった。黎明期では、産学連携の語群は主な活動の語に隣接し、大学、共同研究、教授、特許などの語と近接していることから活発に活動されていることが推測された。また、インキュベーション活動は、主な活動の語群から隔離していたが、施設入居のほか、運営の語が確認され、前向きな活動の実施が推測された。発展期では、インキュベーション活動は主な活動の語群内部に組み込まれ、起業家育成などが活発化していたと推測される。また、産学連携は主な活動の語群に隣接し、学生、製品、特許などの語が増えていることが見て取れた。さらに、ベンチャーキャピタルには、株式、公開、上場、キャピタル、銀行などがグループ化され活発化していたことが推測された。停滞期になると産学連携の語群は、主な活動の内部に組み込まれ、製品や商品開発活動が実施されていたが、インキュベーション活動やベンチャーキャピタルの活動はグループの語数が減少し、新たな起業活動や投資活動は停滞していたものと推測された。以上の結果は、政府による政策やグローバルな経済環境の変動などと一致し、わが国における産学連携活動は、これらに大きく影響していることが明らかになった。