著者
野田 秀孝 後藤 康文
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.117-127, 2013

我が国のソーシャルワークは,1990年代の社会福祉基礎構造改革から,大きな転換期を迎えている。従来の,社会福祉の各法による属性や課題に個別的に対応する方法から,地域を基盤とする総合的かつ包括的な方法への転換であるといえる。従来の各法における社会福祉の実践では,入所施設における処遇を中心に社会福祉実践が行われており,地域を基盤とした社会福祉実践は重要視されてこなかった。制度的には,介護保険制度における地域包括支援センターなどにおける相談支援・支援事業や障害者自立支援制度における障害者の地域移行事業,相談支援事業などであり,児童,高齢者,障害者領域での虐待防止などで,市町村を核とし,より小さな単位である地域において,地域住民を巻き込んだ形での支援体制の強化・充実が重要視されている。本稿では障害福祉分野の施策である援費制度,障害者自立支援法,障害者総合支援法といった各法制度の成立背景や法のねらいに焦点をあて,制度的ソーシャルワークの機能や課題について述べ,コミュニティ・ソーシャルワークについて考察する。
著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2017-05-31

2015(平成27)年4月に生活困窮者自立支援法が施行され、これまで制度の狭間であった、生活保護に至るまでにない生活困窮のものに対する支援が始まった。従来の福祉サービスは、高齢者、児童、障害者など特定の分野において、特定の者を選別し、サービスの可否を定めて行ってきたものである。近年の社会情勢から、様々な要因から、経済的困窮に至る要因が複雑に絡み合っていると考えられる。これまでのセーフティネットだけでは、生活困窮に至る状況を食い止めることができない。そのため、第2のセーフティネットとして施行されたのが生活圏窮者自立支援制度である。この制度は、経済的労働的自立支援を中心としているが、その他の制度の狭間で今まで対象にならなかった人々、支援が届かなかった人々を対象に支援を可能にする余地が十分にあると考えられる。さらには住民活動などのインフォーマルサービスから公的扶助などのフォーマルサービスまでを含む重層的なネットワークやワンストップサービスなどの総合的な包括的な相談窓口などの設置の可能性も含むものと考えられ、地域福祉的な視点で考えるに、重要な制度となると思われる。本稿は重層的で幅の広いシステムの構築の可能性を視野に、地域福祉的視点で生活困窮者自立支援法をとらえ課題と展望のための一考察を示すものである。
著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.61-65, 2017-10-25

2000(平成12)年に社会福祉法が施行され,我が国の社会福祉の目的に地域福祉の推進が明確にされた。その目的を達成するために,市町村が地域福祉計画を策定することが努力義務とされた。一方民間の市町村社会福祉協議会は,2000(平成12)年以前から地域福祉計画(現在では名称を地域福祉活動計画としている)の策定を行ってきた。行政である市町村が立てる計画と,民間の市町村社会福祉協議会が立てる計画の目的は,社会福祉法の目的である地域福祉の推進を進めることである。その内容から考えるに,共通の政策・施策・事業を協働分担することで,社会福祉法で目的とされた地域における福祉の推進が浸透すると考えられる。現在多くの市町村で市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画が一体的に作成されている。一方,一体的に策定されず別々に策定が進んでいる地域,行政の努力義務なので未だに市町村地域福祉計画が策定されていない地域(厚生労働省によると2017(平成29)年3月31日時点で市町村地域福祉計画策定済市区町村は69.6%,策定予定市区町村は8.3%,策定未定市区町村は22.2%となっている)も存在する。筆者は市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画を一体的に策定する方法でこれまで各地の計画策定にかかわってきた。一方一体的策定をしていない地域の計画策定にもかかわってきた。本論文は,市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画との一体的な策定での得られる意義を確認しつつ,地域における福祉の推進に対して,計画を一体的策定する場合の優位性を考察してみたいと考える。
著者
後藤 康文 野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.65-78, 2015

社会福祉基礎構造改革で,地域福祉の推進が社会福祉の目的となっている今日,基礎自治体には,自助・共助・公助による地域福祉システムの構築を政策的に進める責務がある。同時に社会福祉サービスの提供主体として,地域福祉システムの一翼を担う社会福祉法人を規定する制度改革が行われたのである。社会福祉法人に関する制度改革は,基礎自治体の福祉政策にいかなる影響を及ぼすのかは重要な論点といえよう。本論文は,基礎自治体と社会福祉法人の役割を軸に,地域福祉政策を考察するものである。
著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-41, 2012-05-31 (Released:2016-02-15)

近年、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、経済的・経済的以外の貧困など学校教育現場において児童生徒指導上、心の問題だけではなく、児童生徒を取り巻く社会的、環境的な問題が背景にあり、問題が複雑になっている。2008年に文部科学省は財務省からの提案を受け「スクールソーシャルワーカー活用事業」として、全国の小中学校にスクールソーシャルワーカーを144箇所配置するとして、国委託事業の全額補助事業として全国で展開された。2009年より補助事業として1/3国庫補助となり今日に至っている。富山県では2008年の国の委託事業開始時より、スクールソーシャルワーカーを配置し取り組んできている。富山県のスクールソーシャルワーカー活用事業も参考にしつつ、スクールソーシャルワーカーの特徴と課題について考察する。