著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.67-72, 1966
被引用文献数
1

タカアミラーゼAは水溶液の状態で紫外線によって強く不活性化される.これは主としてシスチンの開裂酸化に伴う活性に必要な酵素蛋白の立体構造の破壊によるものであり,トリプトファン,チロシン,ヒスチジンなどの酸化も共役している.これらのことは光不活性化とこれに伴うアミノ酸の酸化量を定量することにより示される.光照射に伴う酸素吸収量はアミラーゼの場合と構成アミノ酸混合物とであまり差異がない.これは高分子形成およびconformation形成にあまり依存しないことを示すものである.アミノ酸の光酸化反応は励起1重項&rarr;3重項&rarr;溶媒捕捉準位の無輻動遷移によって作られる光電子による水の還元,これに溶存酸素がカップルして生じたHO<sub>2</sub>と母体ラジカルとの酸化反応と考えられる.<br> このため常磁性イオンの共存により, 3重項&larr;&rarr;1重項の遷移確率をコントロールすることにより光酸化反応をコントロ一ルできる.基質の存在は光不活性化反応を保護するが,これは光電子ないしHO<sub>2</sub>に対し基質や分解産物が受容体として働くためであろうと考えられる.
著者
金 三純
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1966

博士論文
著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-17, 1965
被引用文献数
2

タカアミラーゼAは紫外線照射または生体色素リボフラビンの光増感作用によって有効な不活性化が惹起される.前者の場合には2 hit的に,後者の場合は1 hit的に不活性化が進行する.リボフラビンによる光増感不活性化反応は色素の3重項状態と基底3重項状態の溶存酸素との複合体の解離によって生じた1重項状態の反応性に富む酸素分子種によるアミラーゼの酸化反応によるものと考えられる. N-ブロムコハク酸の熱的酸化によるアミラーゼの不活性化反応におけるトリプトファン残基の酸化と,不活性化との関連性,光不活性反応におけるトリプトファンの酸化と活性との関連及びトリプトファン残基の蛍光収率の変化から,トリプトファン残基は酵素活性に重要な関係を持つものと考えられる.<br>アミラーゼ単独系における光不活性化の作用スペクトルから,紫外線直接照射による不活性化はシスチンによって吸収される光による不活性化の相対量子収率は99.2%で,トリプトファンによって吸収される光によるものは0.8%である.シスチンは励起状態で高能率で-S-S- &rarr; -S<sup>..</sup>S-の開裂反応が起り,またトリプトファン残基は量子収率は小さいが,励起状態で電子放出によりラジカルとなり,溶媒系に放出された電子は水を還元し溶存酸素とHO<sub>2</sub>を作り,これによりトリプトファンは酸化される.これらのために不活性化が起る.チロシン残基もトリプトファン残基と同様の酸化を受けうるが,作用スペクトルからはこのための不活性の量子収率は小さいものと考えられる.
著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.73-79, 1966

タカアミラーゼAはリボフラビンの光増感反応によって不活性化されるが,これはリボフラビンの3重項状態と溶存酸素との相互作用によって生起した活牲酸素によるアミノ酸残基の酸化反応に基因する. Warburg検圧計による吸収酸素量に対する不活性化および酸化アミノ酸残基の関係から,完全失活はトリプトファン,ヒスチジン,チロシン,メチオニン,シスチン残基が約70%, 45%, 20%, 4%, 17%において起る.タカアミラーゼと同じアミノ酸組成のアミノ酸水溶液では酸素吸収がアミラーゼよりはるか大であることから,高分子形成や特殊なconformation形成の効果力が光増感酸化反応の面に現われているようである.したがって酵素の変性効果やさらに酵素-基質複合体形成の効果も光増感酸化反応に変化をもたらす.リボフラビンの光増感酸化反応機構を調べるために,常磁性金属イオンの1重項&larr;&rarr;3重項禁止遷移に対する摂動効果を酸素吸収,光不活性化,リボフラビンの螢燐光の消光の相互関連のもとで研究し,光増感反応に活性なリボフラビンの状態は3重項状態と推定した.