- 著者
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金 相集
- 出版者
- 一般社団法人社会情報学会
- 雑誌
- 日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, 2003-03-31
近年の情報技術を用いた電子メディアの飛躍的な発展は,われわれのコミュニケーション環境を一変させている。また,電子メディアがもたらす社会や文化は益々複雑にその様相を変えており,それをある一定の枠組みのなかで論じることはかなり困難な作業になっている。これらの問題を乗り越えるためには,変容しつつあるメディア空間を様々な観点から観察し分析する努力が求められている。本論文では,2000年の韓国国会議員選挙中に高まった「不適格な政治家を落選させようとした」市民運動としての「落選運動」に焦点をあて,この運動をめぐる新聞報道とインターネット(BBS)上での発信内容を分析しつつ,既存メディアとしての新聞とニューメディアとしてのインターネットの関係を明らかにすることを目的とした。第2章では,まず,われわれの社会が今まで経験し,そしてこれから経験していくメディアコミュニケーションの変化の位相を明確に捉えることを目的とし,各メディアの持つ特性について考察した。次に,メディア間で生じつつある融合やミックス,そして相互作用といったメディアコミュニケーションの変化の要因について述べた。最後に,メディアコミュニケーションの変化に欠かせない要因として,メディア環境の地域的特性を取り上げて論じた。第3章では,韓国における新聞とインターネットの特性について考察した。特に,新聞とインターネットを取り巻く環境を社会・政治的な面に注目しながら,主に両メディアの発展過程を中心に述べた。新聞においては,まず,日本による植民支配から解放後の新聞の発展過程を述べた後,その過程から生じた政治との癒着問題と政治権力から独立しようとしたマスメディアの改革運動を中心に韓国社会における新聞の特性を概観した。一方,インターネットにおいては,インターネットが韓国で急速に普及した原因と韓国社会におけるインターネットのもつ意味について論じた。第4章では,落選運動の期間中報道された新聞の内容と同期間行われたインターネット上での議論の相互参照の関係に着目し,1)新聞とインターネットの間に,言説の相互参照の関係はどのように行われるのか,2)メディア間の相互参照の結果,各々のメディアの発する言説はどのような変化をみせるのか,3)このようなメディアコミュニケーションの変化は,世論形成にどのような影響を及ぼすのか,という3つの観点で分析を試みた。その結果,新聞はインターネット空間で交わされる議論の主な情報源として用いられており,逆にインターネット上での議論及び話題も新聞に影響を及ぼしたという結論が得られた。また,このようなインターネットと新聞の発する言説の相互参照関係によって,一部の新聞においてその報道内容に変化が生じていることが確認された。第5章では,本論文の要約と今後の課題について述べた。本論文で分析した結果の全体的な考察を通して,メディア間の相互参照の関係がどのように地域社会の世論形成過程に影響を及ぼしているのかについて議論した。