著者
金 美伶
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.42-53, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
39
被引用文献数
5 4

本研究は対人不安が日本文化を反映した日本人の特徴であるという意見に疑問を呈し,同じ東洋文化である韓国大学生272名と日本の大学生250名を対象にした比較文化研究を行った.青年期の発達課題である同一性の確立,公的自己意識,及び相互依存的自己という3つの要因を取り上げて,共分散構造分析により対人不安発生の因果構造を検討した.その結果,対人不安を規定する3つの要因の影響力の表れ方には差があり,対人不安は日本の方が韓国より高いことが見出されたものの,対人不安に影響する3つの要因のパス図が両国に共通することが示された.対人不安が日本人の特徴というより,韓国と日本に共通する心理構造であることが示唆された.
著者
金 美伶
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.95-104, 2007

抑うつは,「心のカゼである」と言われるほど現代人に蔓延している.その身体的症状は,交感神経の緊張状態であるいわゆる「不安」とは異なる.不安と抑うつの差異は,不安の中核症状は,恐怖感,予期懸念,自律症状にあることに対して抑うつの中核は悲しみ,絶望感,喜びや興味の減退にある.抑うつ症状は,一般的に,激しい無価値感,不全感など,低い自己評価を含んだ感情を伴う.不安と抑うつともにネガティブな自己関連情報のアクセシビリティの亢進を示すのに対して,ポジティブな自己関連情報のアクセシビリティの低下は抑うつ者に限られる.本論文では,現代人の抑うつ発生と抑うつの評価に関する諸理論を考察する.抑うつ発生の諸理論を考察することにより抑うつの予防及び,日常生活からくるストレスへの対処に役に立つことを望んでいる.