著者
金井 喜一郎
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.190-208, 2010-12-30

音楽資料の検索に関しては,典拠コントロール,シソーラス,OPACシステムなどの研究があるが,利用者が求める書誌情報を効果的かつ効率的に提供する研究は限られている。本研究では音楽図書館のOPACの検索機能について,利用者の検索要求に基づきその機能要件の導出を試みる。まず利用者の検索要求を把握するためにレファレンス記録の分析を行う。調査対象は国立国会図書館および昭和音楽大学附属図書館(2種類)の記録である。各記録の内容分析により音楽資料に関する利用者ニーズを類型化し,そのニーズを表現する典型的な検索課題を作成する。次にその検索課題を用いて国内の音楽図書館5館のOPAC検索機能を評価する。調査の結果,音楽資料に関するOPAC検索機能要件として12の機能が導き出された。このうち「音高や歌詞の検索」や「収録曲ごとの詳細検索」は現在のOPACでは実行が難しく,これらを可能にする機能は今後の課題である。
著者
金井 喜一郎
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.168-180, 2015

音楽資料には,一媒体多作品,多責任性,多言語,作品の可塑と断片化などの特徴があり,利用者もこの特徴に関連した検索要求を持っている。しかしながら,現状では音楽図書館のOPACでさえ,これらの特徴に十分に対応できてきないことが先行研究で示されている。そこで本稿では,この問題を解決する一つの方法として音楽資料に関するOPACのPRBR化を目指し,音楽資料に特化したMARCを対象として,著作および表現形の機械的同定のための基礎的な検討を行う。具体的には,音楽資料に特化したMARC(Toccata MARC)からクラシック音楽に関するデータ300件を抽出し,それらのデータの分析結果を参考に,著作および表現形の同定キー作成方法を探る。本研究が最終的に目指すのは,(1)音楽資料に特化したMARCを対象に,(2)文字列照合に基づく同定キーのクラスタリングによって,(3)著作だけではなく表現形の同定も行うことである。本稿は,この研究の第一段階となるものである。,