著者
金子 さゆり
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 = Bulletin of Nagoya City University School of Nursing (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.19-25, 2014-03

本研究は急性期病棟で働く看護師の抑うつ傾向の実態を明らかにし、抑うつ傾向にある看護師の離職意図ならびに医療安全への影響について検討することを目的に、臨床研修病院5施設に勤務する病棟看護師1197名を対象にCES-Dを用いた自記式調査を実施した。病棟看護師の54.0%が抑うつ傾向にあることが示され、経験年数別比較において抑うつ割合に差がみられた。抑うつ傾向による医療安全への影響を検討した結果、抑うつ傾向の有無とインシデント・アクシデントレポート提出数や有害事象発生と関連はみられなかった。一方、抑うつ傾向にある場合はない場合に比べて、薬剤関連のエラーやニアミスを起こす確率が約2倍に、トラブル遭遇頻度は2倍強に高まる可能性が示唆され、さらに離職意図は約2倍に高まることが示唆された。安全な医療を提供していくためにも、看護師の抑うつ状態についてスクリーニングを行い、抑うつ状態にある看護師へのメンタルサポートを充実させていく必要がある。
著者
高橋 聡美 濃沼 信夫 伊藤 道哉 金子 さゆり
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.17-25, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

統合失調症患者の在宅医療が進められる中,病院から地域への療養の場を移した患者のQOLの状態を把握することは,現在進められている施策の評価や今後の精神科領域における在宅医療推進の参考になると考えられる。本研究では,包括的QOL尺度EQ-5Dと,精神疾患特異的尺度QOLIを用い,入院群と地域群のQOLを測定し両者のQOLの差異を明確にし,現在進められている地域医療政策の意義を考察した。調査期間は平成17年10月∼平成18年6月で,クライテリアを満たす外来患者39名,入院患者68名合計107名を対象に面接調査を行った。調査の結果,入院群に関してはプライバシーを確保することが患者のQOL向上につながるひとつの要因であると考えられた。また,地域群の中でもグループホーム居住者は他の群に比べ,生活の満足度が高く,退院後の受け入れ先として患者にとって良好な環境であることが示唆された。