著者
金子 英雄 鈴木 啓子 近藤 直実
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.142-148, 2009 (Released:2009-06-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

IgAはIgA1とIgA2,2つのサブクラスが存在する.各組織でサブクラスの存在比は異なる.IgA2は,細菌のプロテアーゼにより認識されるヒンジ領域のアミノ酸配列を欠いているため,IgA1と比較すると分解されにくく,粘膜面における細菌からの防御に重要である.IgAサブクラスは14番染色体長腕に位置するIgA重鎖遺伝子のα1とα2遺伝子により決定される.クラススイッチに先立ちIα germ-line transcriptsの転写が必要である.IgA欠損症はIgAのみの産生低下を示す免疫不全症であるがIg欠損症の一部はIα germ-line transcriptsの発現が低下しており,クラススイッチ障害がその病態として考えられた.IgA欠損症の血漿中のBAFF, APRILは健常人に比較し有意に高値を示した.サブクラスの発現ではIgA欠損症の多くはα1, α2ともに,発現低下がみられた.α2のみの発現を示したpartial IgA欠損は本邦2例目のα1-pseudoγ-γ2-γ4-ε遺伝子の欠失によるものであった.今後さらに,IgAサブクラスの異常も含めて,その病態が明らかにされることが期待される.
著者
川本 美奈子 大西 秀典 川本 典生 森田 秀行 松井 永子 金子 英雄 深尾 敏幸 寺本 貴英 笠原 貴美子 白木 誠 岩砂 眞一 近藤 直実
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.49-55, 2009-03-01 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14

乳児栄養法とアレルギー疾患発症との関連を明らかにするために,母乳栄養に焦点をしぼり,アレルギー疾患発症頻度や発症機序について検討した.生後6ヶ月時の保護者アンケートによる疫学調査の結果,完全母乳栄養であってもアレルギー疾患を発症している症例を認めた.母乳中のサイトカインや食物抗原について検討した.母乳中には TGF-β1,2 が高濃度に存在していた.母乳中に,卵白アルブミン,カゼイン,グリアジンなどの食物抗原が検出された.母乳中のサイトカインや食物抗原が児の抗原感作や免疫寛容誘導に関わっている可能性が示唆された.また,完全母乳栄養であるにも関わらず乳児期にアレルギー疾患を発症する症例では,母乳中の一部の蛋白が内因性にアレルゲンとして作用している可能性が示唆された.