著者
川本 美奈子 大西 秀典 川本 典生 森田 秀行 松井 永子 金子 英雄 深尾 敏幸 寺本 貴英 笠原 貴美子 白木 誠 岩砂 眞一 近藤 直実
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.49-55, 2009-03-01 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14

乳児栄養法とアレルギー疾患発症との関連を明らかにするために,母乳栄養に焦点をしぼり,アレルギー疾患発症頻度や発症機序について検討した.生後6ヶ月時の保護者アンケートによる疫学調査の結果,完全母乳栄養であってもアレルギー疾患を発症している症例を認めた.母乳中のサイトカインや食物抗原について検討した.母乳中には TGF-β1,2 が高濃度に存在していた.母乳中に,卵白アルブミン,カゼイン,グリアジンなどの食物抗原が検出された.母乳中のサイトカインや食物抗原が児の抗原感作や免疫寛容誘導に関わっている可能性が示唆された.また,完全母乳栄養であるにも関わらず乳児期にアレルギー疾患を発症する症例では,母乳中の一部の蛋白が内因性にアレルゲンとして作用している可能性が示唆された.
著者
松井 永子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

アレルギーの遺伝的要因として、アレルギー疾患で高値となることが多い血清IgE産生に関わるサイトカインシグナル伝達系の中で、特にIgE産生の抑制系に関与する蛋白質の遺伝子に着目し、アレルギー疾患発症の原因遺伝子について検討した。1、IgE産生抑制系に関与する遺伝子変異の同定アレルギー患者においてPHA刺激によるPBMCsから産生されるIFN-γ産生量を検討したところ、IFN-γ産生量は血清IgE値と負の相関関係を示すことが明らかになった。さらに、PHA刺激によるIFN-γ産生量とIL-12やIL-18などのサイトカインで刺激した場合のIFN-γ産生量を比較すると、IFN-γ産生量に解離がみられるアレルギー患者が存在した。そこで、Th1サイトカインのシグナル伝達系のなかでIL-12Rβ1鎖、β2鎖、IL-18Rα鎖、IFN-γR1鎖遺伝子の遺伝子配列を検討したところ、9つの変異が検出された。2、インベーダーアッセイ法による各変異遺伝子の検出検出されたIL-12Rβ1鎖、IL-12Rβ2鎖、IL-18Rα鎖、およびIFN-γR1鎖遺伝子における変異の出現頻度を検討した。IL-12Rβ1鎖遺伝子における3つのミスセンス変異において、M365T変異、およびG378R変異の出現頻度はアレルギー群に有意(p=0.023)に高く、R361W変異はアレルギー群にのみ変異が検出された。IL-12Rβ2鎖遺伝子の4つの変異において、A604V変異の出現頻度はコントロール群に比較して、アレルギー群において有意(p<0.002)に高く、R313G変異、1856 del 91変異、およびH720R変異はアレルギー群のみに検出された。Il-18Rα鎖遺伝子950 del 3変異においてはアレルギー群に有意(p=0.035)に高く変異が出現していた。IFN-γR1鎖遺伝子L467P変異はアレルギー群のみに変異が検出された(p=0.007)。今後、アレルギー素因となる遺伝子変異をパネル化し、組み合わせることにより、同定された遺伝子異常に対応した治療方法を選択することができる。このことにより、より効果的なアレルギー疾患の治療を行うことが可能であると思われる。さらには原因遺伝子異常がアレルギー疾患を惹起するメカニズムを明らかにすることにより、かかるメカニズムに対応した、アレルギーの治療薬の開発することも可能であると考える。