著者
渡辺 太郎 金山 好美 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.39-48, 2008-03-30 (Released:2017-06-28)

研究の目的 特別支援のために活動する教員補助者と担任教師とのコミュニケーションを促進・改善することを目的とした。研究計画 参加者(教員補助者)間マルチベースラインデザインを用いた。場面 公立の小学校の通常学級において行われた。参加者 小学校通常学級の5名の担任教師と教員補助者として活動する4名の学生(大学生1名、大学院生3名)が参加した。介入 教師と教員補助者の間で使用していた「コミュニケーション・カード」を、教師の使用コスト低減に配慮して改良した。具体的には、1)教員補助者の報告内容を項目立て、2)記号を用いることによって教師の返答を簡略化した。行動の指標 カードにおける教師からの1)コメントの生起頻度、2)下位コメントの生起頻度とした。結果 介入期では、教師からのコメントの生起頻度が高まり、教師による「要望」や「共感」コメントの生起頻度も高くなった。また、教師から記述コメントが付加されたことにより、教師の教員補助者に対するコメントの情報量が全体的に向上した。結論 記号による返答方法は、教師からのコメントの増大に効果があることが示唆された。また、教師からのコメントの中でも、特に「共感」と「要望」コメントの生起頻度の増加が、教師と教員補助者のコミュニケーションに互恵的な強化関係を生じさせた可能性が考えられた。そして、その結果、介入後では、担任教師からカードの書式に対するアイディアの提案や対象児以外の児童へのサポートの要望が出されるなど、教師と教員補助者のコミュニケーションをさらに発展させる可能性が考えられた。