著者
湯上 浩雄 金森 義明 井口 史匡
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では,高温物体の表面に波長と同程度の周期構造(回折格子)を形成することにより、熱放射スペクトルの制御を行い、熱光発電システムや化学反応プロセス等の高効率な熱利用システムを構築することを目的としている。昨年度の研究において、Maxwell方程式の厳密解を求めるシミュレーションコードにより、各システムに最適な微細構造の決定を行うとともに、可視領域の輻射スペクトルを選択的に放射する表面ナノ構造体を高融点金属に作製するためのプロセス研究を行ってきた。この成果にもとずき、本年度は以下の研究を行った。1.昨年度までに整備したフーリエ赤外分光器を中心とした熱放射スペクトルの絶対値を測定する装置により,単結晶および多結晶タングステン試料表面に製作した表面回折格子からの熱放射を測定し、キャビティ深さと熱放射スペクトルについて系統的に調べた。その結果、キャビティ深さが浅い場合は、表面プラズモンポラリトン共鳴による放射が観測されるが、キャビティ深さの増大とともに、孤立したキャビティ内部の電磁波モードからの放射が支配的となることが分かった。2.光学定数が複雑な分散関係を示す材料に適応可能なFDTDプログラムコードを開発して,構造との共鳴効果による熱放射スペクトルへの影響を定量的に解析すると共に、実験結果との比較を行った。その結果、開発したFDTDコードにより、熱放射スペクトルが再現でき、実験と定量的な比較が出来る事が分かった。3.これまでの研究成果の取りまとめを行と共に、今後の研究の方向性や更に研究すべき課題について検討した。
著者
湯上 浩雄 齋 均 金森 義明 佐多 教子 圓山 重直
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

我々は、熱光起電(Thermo-Photo-Voltaic : TPV)発電に関する研究を行っていく過程で、フォトニック結晶と類似の表面ナノ構造により熱放射スペクトルが制御できる可能性が有ることを見出した。本研究では、この量子共鳴効果を用いた熱放射スペックトル制御機能の発現原理の解明と、TPV以外の熱工学応用分野への適応性に関して研究を行う。本研究では,熱放射スペクトルの制御を行うことにより,より高効率な熱利用システムを構築するとともに、作製したナノ構造エミッタの熱・光学特性を評価し、機能性発現原理と応用について考察する。前年度行った、Maxwell方程式の厳密解を求めるRigorous Coupled-Wave Analysis(RCWA)法に基づいた解析プログラムコードによる、最適な微細構造の決定、微細領域の放射スペクトルを測定するための放射測定装置の設計と製作に引き続き、以下の研究を行った。・可視領域の輻射スペクトルを選択的に放射する表面ナノ構造体を高融点金属に作製し、高温耐性を有する構造を実現するために、単結晶タングステン金属を用いて表面微細構造を製作し、1400Kにおいても安定な構造を得ることができた。・実際の試料の製作に当たっては製作誤差が不可避であり、それを考慮して改めて設計を行い、周期1.0-1.2μmの試料を作製した。これにより可視〜2.0μmの放射率が増大し、波長特性が改善された。・開発したRCW法に基づく数値解析と、微細構造のパラメータを変化させた試料の放射特性の比較から、今回得られた熱放射特性の変化は、主としてマイクロキャビティ効果に起因することが実験的に示された。