著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を,実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果,6月の種子散布後,散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で,異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果,(1)種子を湿潤・暖温条件に2∼3ヶ月間貯蔵してから5°Cで発芽させた場合,(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月∼1ヶ月間貯蔵してから10∼20°Cで発芽させた場合,(3)30°C/10°Cの変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から,自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と,冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また,高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や,暗条件ではほとんど発芽しなかったことから,土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また,同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009 (Released:2011-03-05)

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を、実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果、6月の種子散布後、散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で、異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果、(1)種子を湿潤・暖温条件に2〜3ヶ月間貯蔵してから5℃で発芽させた場合、(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月〜1ヶ月間貯蔵してから10〜20℃で発芽させた場合、(3)30℃/10℃の変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から、自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と、冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また、高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や、暗条件ではほとんど発芽しなかったことから、土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また、同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
17

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を,実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果,6月の種子散布後,散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で,異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果,(1)種子を湿潤・暖温条件に2∼3ヶ月間貯蔵してから5°Cで発芽させた場合,(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月∼1ヶ月間貯蔵してから10∼20°Cで発芽させた場合,(3)30°C/10°Cの変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から,自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と,冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また,高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や,暗条件ではほとんど発芽しなかったことから,土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また,同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
金澤 弓子 亀山 慶晃 李 景秀 濱野 周泰 鈴木 貢次郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.129-138, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
37
被引用文献数
2

早咲きのサクラ品種の多くは,カンヒザクラ(P. campanulata Maxim.)から作出されたと考えられてきたが,由来が不明な品種も多い.また,原種とされるカンヒザクラは中国,台湾,日本に生育するが,それらの遺伝的関係は明らかにされていない.本研究では,早咲きのサクラ品種の原種を推定するとともに,原種として重要なカンヒザクラについて,その地域集団の遺伝的組成に違いがあるのかを検証するため,AFLP分析を行った.早咲きのサクラ品種として14品種を取り上げ,これらの原種候補として,カンヒザクラとオオシマザクラ(P. lannesiana Wils. var. speciosa Makino),ヤマザクラ(P. jamasakura Sieb.)の3種を選定した.カンヒザクラは中国,台湾,日本に生育する個体を供試した.主座標分析(PCoA)およびSTRUCTURE解析の結果,中国,台湾,日本のカンヒザクラは,地域集団ごとに異なる遺伝的組成が示された.さらに,日本の早咲きのサクラ品種は,その大半が日本のカンヒザクラに由来しており,台湾の早咲きのサクラ品種は,その大半が台湾のカンヒザクラに由来することが示唆された.また,中国や台湾のカンヒザクラの中には日本の系統の遺伝子を保有する個体の存在が示唆された.これは,異なる地域のカンヒザクラ系統あるいは早咲きのサクラ品種からの遺伝子の移入の可能性も示している.早咲きのサクラ品種において,14品種のうちカンヒザクラとオオシマザクラの雑種が5品種,カンヒザクラとヤマザクラの雑種が4品種,原種の変異個体が3品種であると推測された.また残りの2品種ではそれぞれ複数の遺伝的組成を有していた.カンヒザクラの遺伝的多様性を適切に保全するためには,カンヒザクラやカンヒザクラに由来する品種は,日本・中国・台湾の各地域レベルで保全・管理していく必要がある.