著者
鈴木 成宗 坂宮 章世 金澤 春香 栗田 修 矢野 竹男 苅田 修一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-69, 2016-06-15 (Released:2016-09-29)
参考文献数
36
被引用文献数
1

特徴的なクラフトビール用酵母を得ることを目的とし,三重県伊勢市の椎の樹液から採取した微生物群を用いて,ビール醸造を行い,発酵性態の良好であった菌叢からコロニーを単離した.得られた菌株は,ITS-5.8S rDNA-ITS2領域(ITS領域)の遺伝子解析を行い,新規のSacchromyces cerevisiae(S. cerevisiae)に属する株であることを確認し,KADOYA1と命名した.KADOYA1の実用性および特徴を評価するため,実用エール系ビール酵母株1056および3068を対照に,実用規模(1,000 L)でのビールの試験醸造を行った.KADOYA1は1056株および3068株と比較すると,醗酵速度がやや遅かったが,醗酵力は十分な実用性があることが確認できた.それぞれの酵母で醸造したビールの香気成分をGC-マススペクトロメトリーにより分析したところ,KADOYA1は1056株および3068株とは異なる特異的な香気成分の生産性をしていることが明らかとなった.さらに,におい識別装置で香気特性は評価したところ,1056株および3068株で醸造したビールとは異なる香気特性であることが確認できた.以上のことから,KADOYA1は実用ビール酵母として有用であると判断できたので報告する.