著者
釘宮 正往
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.854-858, 1993-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

野菜類及びいも類の酸・アルカリ処理による組織の崩壊の難易について検討した.酸処理は試料に塩酸を加えて上澄み液のpHを1.0~1.5として35℃で1時間または崩壊しにくい場合は24時間放置し,アルカリ処理は水酸化ナトリウム溶液を加えて上澄み液のpHを12.5~13.0として室温で2時間撹拌した.用いた試料の重量とアルカリ処理後の未崩壊物の重量から崩壊度(%)を求めた.その結果,トマト,カボチャ,サッマイモは酸処理なしで,アルカリ処理のみで,組織がほぼ完全に崩壊した.キュウリ,ナス,ピーマン,タマネギ,ニンニク,ユリ根,サトイモ,ジャガイモは酸・アルカリ処理で組織がほぼ完全に崩壊した.キャベツ,ハクサイ,レタス,ホウレンソウ,グリーンアスパラガス,プロッコリーは酸・アルカリ処理によって組織の50~100%が崩壊したが,崩壊度のばらつきが大きかった.このことは組織の接着機構の不均一性や繊維状組織の存在に起因するのではないかと推測した.ダイコン,ニンジン,ゴボウ,レンコン,ショウガ,クワイは酸・アルカリ処理による崩壊度が28%以下であり,組織が崩壊しにくいことが明らかとなった.組織が崩壊しにくいものの中には酸・アルカリ処理によって軟化するもの(ダイコン,ニンジン,クワイ)と,しないもの(ゴボウ,レンコン,ショウガ)があった.以上の結果から,酸・アルカリ処理による組織崩壊の難易は組織の接着機構の違いを反映したものと考察した.