著者
角田 聖 鈴木 千裕 佐川 由葵 水谷 多恵子 正木 仁
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.204-210, 2015 (Released:2017-03-21)
参考文献数
14

太陽からの紫外線が未成熟な皮膚老化を促進することはよく知られている。このような皮膚老化を一般的には光老化とよぶ。近年, 化粧品会社は光老化皮膚の進行リスクを抑えるため日常の日焼け止め化粧料の使用を推薦している。一般的に, 日焼け止め効果は酸化チタン, 酸化亜鉛のようなUV散乱剤と有機系のUV吸収剤によって発揮される。UV吸収剤の中でoctyl methoxycinnamate(OMC)と4-tert-butyl-4'-methoxydibenzoylmethane(BMDBM)が汎用されており, また, 使用中に光劣化することが知られている。UV吸収剤を皮膚へ塗布し太陽光に曝露されたときに生じる光劣化は, 光防御効果を低下させ, その結果, 紫外線紅斑の生成や光老化皮膚の形成を加速する。このようなUV吸収剤の光劣化を抑制するために皮膚へのUV吸収剤を塗布したような薄膜状態での光劣化挙動を理解することは重要なことである。本研究は, 上記のような現象に対する解決の糸口を見出すことを目的として実施した。UV吸収剤の中で, BMDBMはもっとも光劣化の度合いが高くなることが見出された。さらに, BMDBMの光劣化の程度は油剤の極性と負の相関を示した。この傾向はBMDBMを油剤に溶解した単純系およびシリコーン油抜きのW/O製剤系で確認された。さらに, BMDBMとUVB吸収剤を組み合わせたときの光劣化は, OMCとの組合せでUVA領域とUVB領域は同程度の光劣化の程度を示したが, 2-hydroxy-4-methoxybenzophenone(HMBP)あるいはethylhexyl triazone(EHT)との組合せでは, UVB領域に比較してUVA領域の光劣化の程度が強く確認された。また, 光安定化剤であるoctcrylene(OCR)とmethoxyoctocrylene(MOCR)はUV吸収剤と同量以上の濃度が光劣化を抑制するためには必要であることが確認された。最後に, BMDBMの光劣化には部分的にラジカル形成が関与している可能性が示唆された。