著者
入澤 篤志 高木 忠之 渋川 悟朗 佐藤 愛 池田 恒彦 鈴木 玲 引地 拓人 佐藤 匡記 渡辺 晃 中村 純 阿部 洋子 二階堂 暁子 宍戸 昌一郎 飯塚 美伸 鈴木 啓二 小原 勝敏 大平 弘正
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.29-36, 2011 (Released:2011-03-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2

慢性膵炎の予後は芳しくなく,より早期での慢性膵炎診断の重要性が認識されていた.早期慢性膵炎は微細な膵実質・膵管変化のみが伴うと考えられ,従来の画像診断(体表超音波検査,CT,内視鏡的逆行性胆膵管造影:ERCP,など)では異常を捉えることは困難であった.近年,超音波内視鏡(EUS)による慢性膵炎診断が提唱され,その有用性は高く評価されてきた.EUSは経胃もしくは経十二指腸的に,至近距離から高解像度での観察が可能であり,他の検査では捉えられない異常が描出できる.2009年に慢性膵炎診断基準が改定され早期慢性膵炎診断が可能となり,この診断基準にEUS所見が明記された.より早期からの医療介入のためにも,慢性膵炎診療におけるEUSの役割の理解はきわめて重要である.特に,上腹部痛や背部痛を訴える患者で,明らかな消化管異常が認められず慢性膵炎が疑われる症例においては,積極的なEUS施行が推奨される.