- 著者
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鈴木 弥生
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.44-63, 2018-07-20
本稿は,バングラデシュ農村の貧困女性を対象とするグラミン銀行の活動に焦点をあて,その基本となるショミティ組織化の過程と融資を活用している貧困女性および家族構成員の変化を明らかにすることを目的とする.そのために,われわれは,1997〜2010年にかけて,先行研究の分析および現地調査を実施している.グラミン銀行が,S村に居住する貧困女性に対して,ショミティ(≒小グループ)を組織化して融資を有効活用することを勧めたのは1991年である.それまで多くの貧困女性は,農村はもとより,バリ(家屋とその中庭)の外に出たこともなかった.そのうえ,家族や親族以外の人と関わる機会もなかったため,ショミティ組織化の過程は容易ではなかった.また,多くの貧困女性は,経済的にも社会的にも家庭内で夫に依存することを余儀なくされていた.その後,融資を活用して経済活動に参加するようになった女性たちは,徐々にではあるが,自己雇用のスキルや収入,そして意識を向上させ,活動範囲を拡大している.このような貧困女性のエンパワメントは,家庭内での決定権や子どもの生活,識字や教育に重要な影響を及ぼしている.また,ショミティ組織化および貧困女性のエンパワメントには,グラミン銀行の介入のみならず,農村内の相互扶助関係が不可欠であったとみることができる.