著者
植松 孝悦 笠原 善郎 鈴木 昭彦 高橋 宏和 角田 博子
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-33, 2020 (Released:2020-04-06)
参考文献数
26
被引用文献数
1

自覚症状のある乳癌の早期診断は,その乳癌患者の予後と生存率を改善させる。そのためには,乳癌の初期症状を早く自覚して速やかに医師を受診するという乳房の健康教育の普及が重要であり,この正しい保健医療行動が確実に進行乳癌の減少をもたらす。ブレスト・アウェアネスは,乳房を意識した生活習慣を通して,乳房に変化を感じたら(乳癌の初期症状を早く自覚する)速やかに医師を受診するという正しい保健医療行動をとるための健康教育であり,乳がん検診の理解とその受診勧奨を目的とした啓発活動である。ブレスト・アウェアネスを実践することで,マンモグラフィ偽陰性の場合でも,早期に乳癌を発見し速やかに診断と治療が可能となる。つまり,ブレスト・アウェアネスの普及が,対策型乳がん検診の高濃度乳房問題に対する具体的な対応策の一つである。さらにブレスト・アウェアネスの推奨は,若年性乳癌の早期発見のための具体的な方策にもなる。ブレスト・アウェアネスは乳がん教育を実践するための具体的なキーワードであり,これから教育現場で行われるがん教育でも積極的に取り入れられるべき内容と思われる。ブレスト・アウェアネスの普及に器機の整備や購入の必要性はない。よって,その体制を整えることは比較的容易であり,速やかに全国一律で実施することが可能である。ブレスト・アウェアネスは,効率的かつ効果的な乳癌対策であり,乳がん検診と並ぶもう一つの乳癌医療政策の柱として,わが国も積極的に導入すべきである。
著者
栗山 進一 大貫 幸二 鈴木 昭彦 市村 みゆき 森久保 寛 東野 英利子 辻 一郎 大内 憲明
出版者
日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-98, 2007-03-30 (Released:2008-07-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 40歳代女性に対する超音波・マンモグラフィ併用 (US & MMG), 超音波単独 (US単独), マンモグラフィ単独 (MMG単独) の3種類の逐年検診方法を, シミュレーション分析により救命効果, 効率の点から比較検討することである。各検診方法に対して10万人ずつの仮想コホートを設定し, 検診とその効果をシミュレーションにより追跡した。それぞれの検診を行うコホートで, 要精検者数, 乳がん患者数を, 検診の感度・特異度, 乳がん罹患数より計算し, 期待生存年数を早期乳がん比率, 病期別の5年生存率, 平均余命より算出した。費用効果比は検診により生存年1年延長に要する費用である。検診方法別の感度・特異度, 早期乳がん比率は, 平成12年度~16年度に栃木県保健衛生事業団が行った地域住民出張検診データから算出した。救命数の差をみると, 検診方法別ではUS & MMGが最も大きく, US単独, MMG単独の順に低下した。費用効果比をみると, US単独が他の2つの検診方法より良好であり, MMG単独, US & MMG単独の順で費用効果比が低下した。最も効果の高いのはUS & MMG検診であり, 最も費用効果比が良かったのはUS単独検診であった。