著者
向井 伸彦 岡田 明彦 鈴木 昭紀 高橋 利郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.967-975, 1998-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
8 11

ビール醸造の観点から, ビール酵母, 清酒酵母, 焼酎酵母及びワイン酵母の各醸造用酵母の特性を比較することを目的に, 炭素源の発酵性・資化性試験や酵母の凝集性試験を実施した。また, 三角フラスコレベル (100ml) 及び発酵管レベル(2L)での麦汁発酵性試験を実施し以下の結果が得られた。ビール酵母は, マルトース及びマルトトリオースの発酵・資化性が高く, 麦汁中でよく発酵したとともに凝集性が強かった。ワイン酵母は, ビール酵母同様マルトースの発酵・資化性が高く, また, 一部の酵母でマルトトリオースの発酵・資化性も高く, 麦汁中で比較的よく発酵したが, 凝集性は弱かった。清酒酵母は, ガラクトース, マルトースの発酵性・資化性が弱い傾向がみられた。焼酎酵母では, マルトースは発酵・資化したもののマルトトリオースの発酵・資化性が低かった。これらの酵母では, 一部の酵母である程度麦汁を発酵したが, おおむね麦汁の発酵性は低く, 凝集性は弱かった。さらに, 麦汁による小規模の発酵性試験で比較的よく発酵したワイン酵母 (K-1), 及び清酒酵母(民14)を用いてパイロットスケール (100L) での試験醸造を実施した。その結果, これらの酵母を用いた場合, ビール酵母に比べ, 主発酵の期間が長くなり, 真正発酵度は高くはならなかったが, ビールを製造出来ることが確認された。また, 試醸したこれらのビールは官能評価を行ったところ, ワイン酵母によるビールは酸味とフェノール臭が強く, 清酒酵母によるビールはエステル香が強いことがわかった。ワイン酵母は, バイツェン酵母と同様にフェルラ酸の脱炭酸による4-ビニルグアイヤコールへの変換能を持つこと及び, 清酒酵母は麦汁中での発酵における酢酸イソアミルの生成が他の醸造用酵母に比べて高いことがわかった。

2 0 0 0 OA 酵母の増殖

著者
鈴木 昭紀
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.21-24, 1974-01-15 (Released:2011-11-04)

発酵槽の中で黙々と働き, そして死んでゆく物言わぬ酵母。これだけ厄介になりながら我々はその性質の一端をとらえて議論することはあっても酵母の本体について広い角度から眺めようという努力を怠りがちである。酵母の分類から応用上の特性にいたるまでの広範囲の情報を肩の凝らない形にまとめていただいた。素養を深めるための好個の読み物である。
著者
鈴木 昭紀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.641-652, 2010 (Released:2016-02-04)

日本酒の販売数量は昭和48年から前年対比マイナスという状況が続き,昭和48年の最高時の40%を割り込み,酒類全体に占める日本酒のシェアも7%以下の状況になっているが,明確に歯止めがかかったとはいえない状況で,今もまだ減少傾向が続く状態で推移している。このような状況を打破するため,経営者はいろいろ検討されてきているものの,それらの各種試みが効を奏していない現状から,筆者の解析や今までの経験などを通じて至った結論をベースに,新たな今後の展開に対する考え方についての解説をお願いした。