- 著者
-
大野 敦子
鈴木 萌人
矢田 幸博
- 出版者
- 公益社団法人におい・かおり環境協会
- 雑誌
- におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.50-59, 2022-01-25 (Released:2022-02-10)
- 参考文献数
- 37
紅茶の香りが自律神経活動に及ぼす効果について検討した結果,ダージリン紅茶セカンドフラッシュの香り吸入後に縮瞳率および指尖皮膚温は有意に上昇した.その効果は,アッサム紅茶とウバ紅茶の香りの効果より大きかったことから,交感神経活動を抑制し,副交感神経活動を優位にする鎮静作用が高いことが示唆された.香気成分分析によりダージリン紅茶セカンドフラッシュに特徴的な香気成分;ゲラニオール,ホトリエノール,2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン,2-フェニルエチルアルコールを選定し,紅茶飲用時の規定濃度でそれぞれ吸入した結果,ホトリエノールのみが縮瞳率を有意に上昇させた.濃度依存性を検討した結果,ホトリエノールは5 ppm以下の低濃度において縮瞳率は有意に上昇した.さらに,ホトリエノール50 ppm吸入後に縮瞳率ばかりでなく,指尖皮膚温も有意に上昇したことから,ホトリエノールはダージリン紅茶セカンドフラッシュと同様の鎮静作用を有することが示された.以上の結果から,ホトリエノールはダージリン紅茶セカンドフラッシュの香りによる鎮静作用の発現に寄与する最も重要な成分であることが示唆された.